| 役柄 | 備考 |
|---|---|
| 旅人エノク | 江戸っ子ふう |
| ロシナンテ | ロバ |
| ヨセフ | |
| マリア | |
| 羊飼いA | 本文では2人だが、人数によりセリフを分担 |
| 羊飼いB | |
| 博士A | 本文では3人だが、1〜2人でも可 |
| 博士B | |
| 博士C | |
| 宿屋A | |
| 宿屋B | 声だけ |
| 宿屋C | |
| イエス | 赤ん坊。"おくるみ"だけでもいいかも |
| ナレーター |
| ナザレの町 | ||
| 今から約2000年も前のこと。ローマの国では、どれくらいの人が国の中に住んでいるのかを調べるために、人口調査の命令が皇帝から出ました。イエス様が生まれたイスラエルの国も、ローマの国の家来だったので、みんな生まれ故郷の町に帰って、自分が今どこに住んでいるかなどを役所にとどけなければならなくなったのです。ガリラヤのエノクさんも、故郷のベツレヘムの町にいかなければなりませんでした。 | ||
| [エノク登場] | ||
| いくらローマ皇帝の命令だからって、みんなが一度に帰省したりしたら、新幹線が混みそうだな | ||
| エノクさん、2000年前には新幹線どころか電車はありませんよ | ||
| そうなのかい?じゃあ、高速バスを予約しておこう | ||
| バスも車もありません | ||
| そいつぁ参ったな。うちにはこのロバのロシナンテしかいねぇしなぁ。おいロシナンテ、明日出発するから、よろしくたのむぞ。 | ||
| まかせておいてくださいご主人さま。 | ||
| そうそう、どうせベツレヘムで一泊すンだから、宿を予約しておかねぇとな。えーと、電話帳はどこにいったかな。 | ||
| 電話もありませんてば。 | ||
| そうかい、困ったなぁ。ベツレヘムは小さい町だから、宿なんかあまりないんだよなぁ。よし、今日は早く寝て、明日は早めに出発しよう。ロシナンテも早く寝るんだぞ。 | ||
| [エノクとロシナンテ、上手に退場] | ||
| ベツレヘムへの途上 | ||
| こうして次の日の朝早く、ロバのロシナンテに荷物を積んだエノクは、ベツレヘムへと出発しました。 | ||
| [上手よりエノクとロシナンテ登場。ロシナンテは大きな荷物を背負っている] | ||
| ずいぶん、日が高くなったな。さすがにチと疲れたか | ||
| ご主人様はいいですよ。荷物を全部持ってるボクの身にもなってくださいよ。 | ||
| しょうがないな、よし、あの木の影で休憩するか | ||
| [二人とも舞台中央で座り込む。下手から羊飼いたちと羊たち登場] | ||
| 旅の方、私たちもここで休ませてもらっていいかい。 | ||
| おう、遠慮はいらねぇぜ。これは俺の木じゃなくて、神様がお育てなすった木だからな、俺が独り占めするわけにはいかねぇや。 | ||
| ではお言葉に甘えて | ||
| [みんな座る。水筒の水など飲みながらの会話] | ||
| お仕事で出張ですか? | ||
| いやいや、皇帝の例の命令で、ベツレヘムまで住民登録に行くんですよ。これくらいインターネットでやれればいいんですけどね | ||
| インターネットもパソコンもケータイもありませんてば! | ||
| おや、あの二人はどうしたんだろう。ずいぶんフラフラ歩いてるぞ | ||
| [全員、上手を見る。マリアをかばいながらヨセフ登場。羊飼いA、様子を見に行く] | ||
| もし、どうなさった。 | ||
| はい、家内が急に具合を悪くしまして、次の町まで行けば医者もいると思うんですが。 | ||
| おい、奥さんずいぶんおなかが大きいじゃないか。まるでもうすぐ生まれそうだ。ちょっとこの木陰で休んで行きなって。 | ||
| どうもみなさん、失礼します。マリアや、ここに座らせていただきなさい | ||
| [みんな座る] | ||
| どこから来なさった。 | ||
| ナザレの町から来ました。私はヨセフ、これは家内のマリアです。 | ||
| 奥さんがそんな体なのに旅をするなんて、無茶だよ。 | ||
| そうは言っても、ローマ皇帝の命令ですから行かないわけには行きません。 | ||
| なんだい、あんたも同類か。どこまで行くんだい | ||
| ベツレヘムです。 | ||
| おや、行き先までいっしょか。でもまだ距離があるぜ、身重の奥さん連れて歩いていくのはたいへんだ。 | ||
| ああ、ちょっと奥さんには気の毒だし、おなかの赤ちゃんにも危険だなぁ。 | ||
| [ロシナンテ、エノクの脇を突っつく。エノク、うるさそうにロシナンテの手を払うが、ロシナンテもしつこい] | ||
| なんだってンだよ! | ||
| 助けてやんなさいよ | ||
| 何? | ||
| あの人たちの荷物もぼくに積んでいいからさ、一緒に行ってやりなよ。 | ||
| そうはいってもなぁ、早くいかねぇと、宿がいっぱいになっちまうぜ | ||
| 何言ってんの、困ってる人を見て放っておく気?それでも江戸っ子? | ||
| 俺はガリラヤっ子だってぇの。っかし放っとくわけにもいかねぇなあ。おい、だんなさん。 | ||
| はい? | ||
| 手を貸してやりてぇのは山々だが、俺も急ぎたいもんでな、その代わりと言っちゃあなんだが、このロバを使ってくれ | ||
| ぼく? | ||
| お前のほかにどこにロバがいる?お前が奥さんを乗せてってやれってンだよ。しょうがねぇから、俺の荷物は自分で持つわ。(立ち上がって荷物を背負う) | ||
| いや、いくらなんでもそれでは | ||
| そうだよ、ご主人様ぼくを置いてっちゃうの? | ||
| うるせぇ。助けてやれっつったのはお前だろ。それとも何か、お前はこの奥さんを乗せることもできないヘッポコ野郎か? | ||
| そりゃ乗せられるけどさ。 | ||
| よし、決まりだ。何しろおなかに赤ちゃんがいるんだから、やさしく乗せてけよ。そういうわけでだんなさん、しょぼいもんで悪(わり)いが、奥さんのためだ、このロバもらってやってくれ。じゃ、俺は行くぜ | ||
| しょぼくて悪かったね。ひとこと余計だよ | ||
| [エノク、下手へ退場。一同見送る。ヨセフとマリアは深々と頭を下げる] | ||
| いまどきイキな男っぷりだねぇ | ||
| ああ、偉いもんだ。では私たちも行きますか | ||
| そうしますか。ではだんなさん、奥さんをお大事に | ||
| 奥さん、元気なあかちゃんが生まれるように祈ってますよ | ||
| [羊飼いたち、上手に退場。ヨセフたち見送る] | ||
| ありがたいことだなぁ | ||
| 本当に。あのかたに神様のご加護がありますように。 | ||
| [次のナレーションの間に、ヨセフ、マリア、ロシナンテ下手に退場。ロシナンテはマリアをおぶっていく] | ||
| ベツレヘム | ||
| こうしてロシナンテとわかれて一人になったエノクは、日が沈む頃やっとベツレヘムにつきました。でももう、どこの宿も、住民登録に来た人たちでいっぱいのようです | ||
| [下手からエノク登場] | ||
| すごい数の人だな。小さい町とはいえ、さすがダビデ王が建てた由緒ある町だけのことはあるか。しかし宿が見つかるかな。ちょいとごめんよ! | ||
| [上手から宿屋A登場] | ||
| はいよ。 | ||
| 一晩たのみたいんだが、部屋ァ空いてるかい | ||
| どこも一杯でして。 | ||
| そこをなんとか。無理を承知で頼んでるんだ。なんなら相部屋だってかまわねぇ。 | ||
| それがもう、食堂にも廊下にも布団をひいて、それでも一杯なんでして。 | ||
| なんだそりゃ、えらい儲かってやがんな | ||
| へぇ、おかげさまで | ||
| 俺のおかげじゃねえやい。しょうがねぇ、他をあたってみらぁ。 | ||
| [エノク下手へ。宿屋A上手にひっこむ] | ||
| ごめんよ | ||
| (声だけ)一杯だよ、他に行ってくれ | ||
| まだ何もいってねぇじゃねぇか。お、あそこにも宿があるぞ | ||
| [エノク、上手へ] | ||
| ごめんよ。こうなったら部屋とはいわねえ、雨風をしのげるところに入れてくれねえか | ||
| [宿屋C、上手より登場] | ||
| へえ、そうまでおっしゃるなら、家畜小屋に使ってる洞窟なら雨風はしのげますが。 | ||
| 洞窟だぁ?しょうがねぇ、自分で言った手前、ありがたく使わせてもらうよ | ||
| ではこちらへ | ||
| [宿屋C、舞台中央へ案内する] | ||
| ここかい?確かに雨風はしのげるが、こりゃすごいにおいだな。おい亭主、これで宿の部屋と同じ料金をとろうなんていわねぇだろうな | ||
| いえ、うちではどの部屋も一律で料金をいただいております。(といいながら手を出す) | ||
| 部屋じゃねえじゃんかよ。まったくしっかりしてやがる。ほらよ(金貨を渡す) | ||
| ありがとうございます。では | ||
| [宿屋C、上手に退場。エノク腰を下ろす] | ||
| あーあ。空の鳥だって巣があるし、野の狐だって穴があるのに、俺様はなんだってこんなところで寝ることになったんだ。(後にむかって)お前ら、メーメーモーモーとうるさいんだよ。 それにしても、こんなに町がいっぱいだとはなぁ。(横になる)そういえば、昼間の奥さんは大丈夫かな。ロシナンテのやつ、まさか奥さんをおっことしたりしなきゃいいんだが(寝返りを打って客席に背を向ける) | ||
| [下手から声だけ] | ||
| お願いします。どうか泊めてください。 | ||
| そうはいっても、一杯だからどうしようもないよ。 | ||
| そこをなんとか。家内がもう生まれそうなんです。 | ||
| 事情はわかるが、何しろ私の家族の部屋までもうお客さんでいっぱいなんだ、本当にすまないが他をあたってくれ。 | ||
| そうですか。 | ||
| あいて!なんだこのロバは、人のことをけとばしやがってこの野郎 | ||
| [下手からヨセフ、ロシナンテ、ロシナンテに背負われたマリア登場] | ||
| 困ったことだ。まさかお前を野宿させるわけにもいかないし、せめて雨露をしのげるところはないかな。 | ||
| 今ごろご主人様は、あったかい布団で寝てるんだろうなぁ。この奥さんと赤ちゃんはどうなるんだろう。 | ||
| (がばっと身を起こす)今、ロシナンテの声がしたような気が。(あたりを見まわす)あーっ、昼間のあんた! | ||
| あ、これは先ほどの。その節はお世話になりました(深深とおじぎする) | ||
| いえこちらこそ、気のまわらねえ奴でして(ヨセフにあわせて深深とおじぎする)。なんてやってる場合じゃない!こんな時間まで奥さん連れて何やってんだよ | ||
| ごらんの通り、どこにも泊まる場所がないのです。 | ||
| なんてこった、こうしちゃいられねぇ。おい亭主、亭主! | ||
| [上手から宿屋C登場] | ||
| へぇ、何かご用で | ||
| 今すぐに、この夫婦に部屋を用意しろ。さあ用意しろ。今すぐしろ。何ならお前の部屋をよこせ! | ||
| そんな乱暴な。 | ||
| (ロシナンテの背から降り、うずくまって)あ、あなた、生まれる〜 | ||
| なんだって! | ||
| なんてこった、もう時間がない。おい亭主、今すぐ布団やら何やらよこせ | ||
| [エノク、宿屋Cを引っ張って上手に退場、すぐに一緒に布団をかかえて出てくる] | ||
| (布団をひろげながら)だんなさん、奥さん、こんなところでお産なんてとんでもないことになったが、恨むならこの宿屋を恨んでくれよ | ||
| [ヨセフ、マリアを布団に寝かせる] | ||
| そんな、私はなにも | ||
| うるせぇっ!突っ立ってる暇があったら、産湯の仕度とタオルをどっさり持って来いっ!あと産婆か医者も呼んでおけよ | ||
| は、はいっ! | ||
| [宿屋C、走って上手に退場] | ||
| いいかだんなさん、奥さん、とにかく落ち着いてな、落ち着いて、えーと、あとは何だ?何をすりゃいいんだ? | ||
| ご主人様、あなたが一番落ち着いてないんですよ | ||
| なんだと | ||
| いいから、ぼくたちは外に出ていましょう。 | ||
| あ、ああそうだな。奥さんよ、ちゃんと神様がいいようにしてくださるから心配すんなよ。気を落ち着けてな | ||
| [ロシナンテ、しゃべり続けるエノクをひっぱって下手に移動、二人とも腰をおろす。ヨセフはマリアの手を握り、無声で励ましている] | ||
| [ときどき家畜小屋のほうを気にしながら]しかしなんだなぁ。こんなところで生まれるなんて、大変だよなぁ。 | ||
| ボクも家畜小屋で生まれたよ | ||
| そりゃそうだろうけど。おい、ありゃなんだ?(空を指差す) | ||
| 星、みたいだけど | ||
| ずいぶん明るくてでかい星じゃないか | ||
| [二人とも空を見上げながら立ち上がる] | ||
| 夜だというのに、その星の光でまぶしいほどあたりが照らされたときです。馬小屋から、元気な産声が聞こえてきました。 | ||
| お、おい、無事生まれたみたいじゃないか。 | ||
| よかったぁ。 | ||
| [エノクとロシナンテ、抱き合って喜ぶ。下手から羊飼いたち登場] | ||
| おや、あなたは昼間の | ||
| よう、いいところに来た。実は昼間の奥さんが、たったいま赤ちゃんを生んだところだ。こいつぁ、めでてぇ夜だ | ||
| え、じゃあ、あの奥さんの赤ちゃんが救い主? | ||
| あ?なんだそりゃ? | ||
| 実はさっき野宿してたら、空いっぱいに天使があらわれなさって、ベツレヘムで救い主がお生まれになったと知らせてくれたのです。 | ||
| それで急いでおがみにきてみたら、見なされ、あの星を。ここが天使が教えてくれた場所に違いない。 | ||
| な、何をばかなことを。こんなくさくて汚いところで、救い主がお生まれになるわけがないだろ。救い主といえば王様じゃないか。生まれるなら宮殿で、、、 | ||
| [エノクが話しているうちに上手から東の博士たち登場、その気配でエノクは振り向き、途中で話すのをやめる] | ||
| おお、ここだここだ | ||
| あの星がここで止まっている。ここで救い主がお生まれになったのだ | ||
| なんだか立派そうな人たちがきたぞ。失礼さんですが、あなたがたは? | ||
| 私たちは遠い東の国から、新しい王様のお生まれを知らせるあの星について来たのです。 | ||
| エルサレムで「救い主はベツレヘムで生まれることになっている」と聞いて、こちらに参りました。 | ||
| [次のエノクのセリフの間に、ヨセフが赤ちゃんを抱いて立ち上がる] | ||
| じゃあ、本当なのかい?あの泣き声が、あの赤ちゃんが、すべての人を救うためにこられた救い主だというのかい? | ||
| [次のナレーションの間に、羊飼いと博士たちひざまづく] | ||
| そう、この赤ちゃんこそ、救い主であるイエス様だったのです。羊飼いのような貧しい人も、博士たちのような外国の人も、すべての人がイエス様に会えるために、イエス様はこんなところで生まれてくださったのです。 | ||
| じゃあぼくは、救い主のお母さんをのせたんだ! | ||
| ばかやろう、何を恐れ多いことを言ってやがる。それよりもこのことを早くみんなに知らせるんだ。 | ||
| そうだ、救い主のお生まれを、みんなに知らせなくては。 | ||
| [エノク、ロシナンテ、羊飼いたち、それぞれ「救い主のお生まれだ」と告げ知らせながら客席を駆け抜ける。博士たちは贈り物を出して捧げる] | ||
| 今から約2000年も前のこと。昔々のお話しです。でもほかの昔話と違うのは、救い主イエス様が来てくださったのが本当にあったことだということ。それもみんなが会いに行けるところに来てくださったということなのです。 | ||
| [了] |
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