| 役柄 | 備考 |
|---|---|
| イスカリオテのユダ | |
| ペトロ | |
| 悪魔 | 道化ふう |
| イエス | |
| アンデレ | 人数による。足りなければペトロのセリフに変更 |
| 熱心党のシモン | |
| 祭司長 | 悪代官ふう |
| 律法学者 | |
| 兵士A | 本稿では二人だが、人数によりセリフを分担 |
| 兵士B | |
| 女中A | 井戸端会議の好きなおばちゃんふう。 本稿では三人だが、人数によりセリフを分担 |
| 女中B | |
| 女中C | |
| ナレーター | 子供番組のおねえさんふう |
| その他の弟子たち | 人数による。セリフはない。 |
| その他 | 鶏の声 |
| 祭司長の家(ユダの裏切り) | |
| [中央に椅子二脚。照明はやや暗いほうがよい] | |
| ここはユダヤの国の都、エルサレム。過ぎ越しの祭りももうすぐという頃、祭司長の家に律法学者がやってきました。 | |
| [祭司長と律法学者が上手から登場、次のナレーションの間に椅子に座る] | |
| この二人はユダヤの国でとても偉い人なのですが、最近こまったことがありました。二人にはたくさんの弟子がいたのですが、その弟子がどんどんイエス様の弟子になってしまうのです。このままでは弟子が一人もいなくなってしまう。そこで二人は、どうしたらいいか相談することにしたのです。 | |
| 祭司長様、どうしたらいいでしょうか。 | |
| あのイエスとかいう男がいなくなってくれればいいのに。 | |
| なるほど。ではイエスが悪いことをしたことにして、逮捕して牢屋に入れてしまいましょう。 | |
| でも、いつも大勢の弟子たちと一緒だから、逮捕するのも大変だぞ。 | |
| [声だけ]フッフッフッ。。。困っているようだな。 | |
| [祭司長と律法学者、椅子から飛びあがるように立ち、あたりを見回す] | |
| な、何者だ! | |
| [ユダ登場] | |
| 私はイスカリオテのユダ。イエスを捕まえたいのなら、手伝いますよ。 | |
| えー?イスカリオテのユダって、イエス様の十二弟子のひとりじゃない。なんでイエス様を捕まえる手伝いなんて。。。 | |
| イエスを裏切るというのか? | |
| そのとおり。だが、ただでというわけにはいかないぞ。銀貨30枚でどうだ。 | |
| [祭司長に]どうします? | |
| む。それで捕まえられるなら安いものだ。出してやれ。 | |
| [ユダに金を渡しながら]では、頼んだぞ。 | |
| しかしユダ、おぬしもワルよのう。 | |
| いえいえ、祭司長さまほどでは。 | |
| [3人、いかにも悪役という感じでいやらしく笑う。祭司長と律法学者は下手へ、ユダは上手へ退場] | |
| ちょっと大変なことになってしまいました。イエス様の弟子が、お金のためにイエス様を裏切るなんて。どうなってしまうのでしょう。あ、イエス様たちが来ましたよ。 | |
| [椅子を片付ける] | |
| とある家の広間(最後の晩餐) | |
| [暗転。椅子を片付けたあと、照明] | |
| 今日はこの家に泊まることにしよう。 | |
| [一同、床に座る] | |
| あー、くたびれた。歩きっぱなしだもんな。 | |
| あれ、ペトロ兄さん、ユダさんがいないよ?どこにいったんだろう。 | |
| [上手から登場してきて座りながら]私ならここだ。 | |
| よし、みんながそろったところで言っておくことがある。この中に、私を裏切ろうとしている者がいる。 | |
| えーっ!? | |
| さっすがイエス様。ユダがやろうとしていることなんて、全部わかっちゃってるんだ。 | |
| 誰だ、イエス様を裏切ろうなんてやつは。俺がぶんなぐってやる。 | |
| [下手から悪魔、忍び足で、しかし大急ぎで登場。弟子たちは、誰が裏切るのかと話し合っている] | |
| [ユダの耳元に]おい、ばれてるらしいぞ | |
| [悪魔、上手へ大急ぎで退場] | |
| え、何?もしかして今のは、悪魔? | |
| [あわてて立ち上がりながら]先生、ちょっと用事を思い出したので、出かけてきます。 | |
| [ユダ、上手に退場] | |
| そうか。ユダが裏切ったのは悪魔のせいだったんだ | |
| イエス様、もし死ななければならなくなっても、私はイエス様を裏切ったりしません。 | |
| [弟子たち、口々に「私も裏切りません」のセリフ] | |
| ペトロ。お前も私を裏切って、今夜鶏が鳴く前に3回も「イエスなんか知らない」ということになるだろう。 | |
| そんな、私がイエス様を裏切るなんて。 | |
| でもわたしがおまえのために祈っているから、大丈夫だよ。 | |
| どういうことなんでしょう。ユダだけでなくペトロも裏切るなんて。でもイエス様が間違ったことをいうはずないし。[上手で走る足音]あれ、外が少しうるさいようですね。誰か来たのかな? | |
| [兵士たち、上手から勢いよく登場。その陰からこっそりユダが登場] | |
| なんだなんだ?[イエス以外立ち上がる] | |
| [イエスを指差しながら兵士たちに]あの男です。 | |
| おまえがイエスか。おまえを逮捕する。 | |
| なんだとこの野郎!俺たちの先生をどうするつもりだ。 | |
| うるさい。[刀を抜く]邪魔をする者は切り捨てるぞ。 | |
| [ユダ、こそこそと上手に退場しかける] | |
| [ユダを指差しながら]あーっ!ユダさん!そんな、ユダさんが裏切るなんて。 | |
| [立ち上がって]みんな、静かに。こうなることは旧約聖書に書いてある通り、つまり神様が決めていたことだから逆らってはいけない。でもユダ、 | |
| [イエス、ユダを見つめる。ユダは背中を向けたまま立ち止まる] | |
| 定められていたこととは言え、おまえのためには、こうならない方がよかった。 | |
| [ユダ、走り去る] | |
| [イエスの腕を取って]さあ、一緒に来てもらおうか | |
| [兵士の足もとにすがりついて]やめてくれ、イエス様を連れて行かないでくれ | |
| [刀をふりかぶって]邪魔をすると、本気で斬るぞ! | |
| [悪魔、上手から走って登場] | |
| 逃げないと捕まるぞー。逃げないと殺されるぞー。 | |
| [悪魔、連呼しながら、舞台を走って一周し、下手に走り去る。兵士たち、刀を振り回して弟子たちを脅す。弟子たち、悲鳴をあげながら悪魔について下手に逃げ去る] | |
| よし、行くぞ | |
| [兵士がイエスを連行して、ゆっくり上手に退場] | |
| [イエスたちの退場にあわせて、上手を見送りながら]なんていうことでしょう。弟子たちはみんな、イエス様を裏切って逃げてしまいました。[下手を向く]あれ?みんな逃げたと思ったら、一人だけ戻ってきましたよ。だれでしょう。 | |
| [ペトロ、下手から、様子をうかがいながらおどおどと登場] | |
| なんとかしなくちゃ。なんとかしてイエス様を助けなくちゃ。 | |
| [ペトロ、ぶつぶつとセリフを繰り返しながら上手に退場] | |
| ペトロ一人でなんとかできるのでしょうか。でもこうなったら、ペトロだけが頼り。ペトロさん、がんばって! | |
| 大祭司の庭(ペトロの裏切り) | |
| 兵隊につかまったイエス様は、大祭司カイアファのところにつれてこられました。これからここで裁判がひらかれるのです。イエス様は悪いことは何もしていません。でもカイアファが「イエスが犯人だ」と言ったら、イエス様は死刑にされてしまうのです。その前にペトロはイエス様を助け出せるのでしょうか。 | |
| [ペトロ、上手から、様子をうかがいながら登場] | |
| イエス様だいじょうぶかな。心配だな。どうやったら助けられるかな。 | |
| [女中A、ペトロの背後から登場。ペトロはまだ気づいていない] | |
| どっかで見た顔なんだけど。。。[ペトロの背中を叩く]ちょいと、あんた! | |
| [驚いて転びながら]うわっ、な、なんだ? | |
| あ、思い出した。あんた、イエスの弟子だね? | |
| [うろたえながら]え、あ、ち、違う! | |
| 違うもんか。[上手を振り向いて]ちょいと、みんな来ておくれよ。 | |
| [上手から女中たち登場。ペトロ、舞台奥へあとずさる] | |
| ねえ、この人イエスと一緒にいた人じゃない? | |
| あ、本当だ。見たことある。 | |
| [立ち上がり、舞台奥の壁に張りつく]ち、違う。違うんだ! | |
| 違わないわよ。でもすごい勇気ね。見つかったらあんたも捕まるかもしれないのに。 | |
| [だんだん声が上ずってくる]つ、捕まる? | |
| 捕まったら、殺されるかもしれないのに。 | |
| [悲鳴の一歩手前くらい]こここ殺される? | |
| [上手から声だけ]どうした騒々しい。何かあったのか? | |
| [悪魔、下手から走って登場] | |
| [ペトロのまわりをおどけて回りながら]捕まったら殺されるぞ。捕まったら殺されるぞ。 | |
| 違う!俺は弟子じゃない。『イエスなんか知らない!』[『〜』の部分を強調して] | |
| [悪魔、不敵に笑いながら、観客席に向かって指を1本立てる。上手から兵士A登場] | |
| どうした、何があったんだ。 | |
| この人、イエスの弟子なんですよ。イエスを助けようとして忍び込んだらしくて。 | |
| [ペトロをにらみつけて]なんだと?きさま、本当か! | |
| [舞台を踊るように回りながら]捕まったら殺されるぞ。捕まったら殺されるぞ。 | |
| 違う!俺は弟子じゃない。『イエスなんか知らない!』[『〜』の部分を強調して] | |
| [悪魔、不敵に笑いながら、観客席に向かって指を2本立てる。兵士A、ペトロを見定めるように、下手へ移動しながら次のセリフ。ペトロは兵士Aを目で追い、上手に背を向ける、以下、兵士Aと女中たちはおおげさな動きをつけてペトロを追い詰める] | |
| そういえば、イエスを逮捕したときにいたような気がするなぁ。お前、イエスの弟子だな! | |
| そうよ、この人イエスの弟子よ。 | |
| 間違いないわ。 | |
| 捕まったら殺されるぞ。捕まったら殺されるぞ。 | |
| [上手、ペトロの背後から、兵士Bに連行されてイエス登場] | |
| 違う!俺は弟子じゃない。『イエスなんか知らない!』[『〜』の部分は絶叫] | |
| [ペトロのセリフが終わるのにかぶせて、鶏の声。同時にペトロ、女中たち、兵士Aはストップモーション。悪魔だけ、不敵に笑いながら、観客席に向かって指を3本立てる。] | |
| どうした。なにかあったのか? | |
| [ペトロだけ、兵士Bの声で非常にゆっくりと振り向き、イエスと目が合う。舞台上の全員、ストップモーション] | |
| なんということでしょう。イエス様の言ったとおり、ペトロは鶏が鳴く前に3回も「イエスなんか知らない」と言ってしまったのです。イエス様をとっても好きで、イエス様のためなら死んでもいいとまで言っていたペトロまで、イエス様を裏切ってしまったのです。 | |
| 知〜らないっと | |
| [悪魔、おどけながら上手に退場。次の兵士Bのセリフを合図に、女中たちと兵士たちは同時にしゃべり出す。イエスとペトロは見詰め合ったまま動かず、他は対照的におおげさな身振り] | |
| 何があったんだよ。 | |
| ちょうどいいところにきた。いや、実はな、 | |
| ちょっとちょっと、たいへんなのよぉ、 | |
| 兵隊さん、(ペトロを指差しながら)この人がね、 | |
| あ、あんたがイエスだね。あんたの弟子がさぁ、 | |
| [全員、好き勝手にしゃべっている中、ペトロは非常にゆっくりと観客席に向き直る] | |
| うわーっ![絶叫しながら観客席を突っ切って退場] | |
| あ、ちょっとお待ちよ[ペトロを追って退場] | |
| [女中たちを見送ってから兵士Aに]なんだったんだ? | |
| よくわからん。ま、いいか。行くぞ。 | |
| [兵士たち、イエスを連行して下手へ。舞台端でイエスは足を止め、ペトロの去った方を振り返る] | |
| ペトロ。お前のために祈っているぞ。 | |
| [兵士たち、イエスを引いて退場] | |
| エルサレム市内某所(十字架と復活) | |
| とうとうペトロもイエス様を助けることができませんでした。それどころか、裏切って逃げてしまうなんて。そしてとうとう、イエス様は十字架で死刑にされてしまったのです。でも、わたしたち一人一人を罪から救うためにイエス様が死んでくださることは、そのずっと昔から神様が決めていたことでした。ところで、イエス様を裏切ったユダとペトロはどうなってしまったのでしょうか。あ、二人がやってきました。ユダもペトロも、イエス様を裏切ったことをとても後悔しているようです。。 | |
| [上手からペトロ、下手からユダ、登場。離れて呆然と立ち尽くす。もしあれば、それぞれにスポットライトをあて、照明を消す。悪魔登場、ユダの背後に立つ] | |
| なぜ、こんなことになってしまったんだ。 | |
| お前のせいじゃないか。お前がイエスを裏切って、銀貨30枚で祭司長に売ったから、イエスは捕まって殺されたのさ。 | |
| 私が、裏切った、から。 | |
| [ユダ、よろめきながら下手に退場。悪魔、ペトロの背後に移動] | |
| なぜ、こんなことになってしまったんだ。 | |
| お前のせいじゃないか。おまえがイエスを裏切って、自分だけ逃げたから、イエスは捕まって殺されたのさ。 | |
| 私が、裏切った、から。[ひざまずく] | |
| そうさ、お前が裏切ったから。。。 | |
| [うなだれて祈る]イエス様、ゆるしてください。神様、ゆるしてください。 | |
| [突然うろたえて]き、きさま何をしている。やめろ、うぎゃー | |
| [悪魔、悲鳴を上げながら下手に退場。ペトロ、次のナレーションがはじまってから上手に退場] | |
| あれ?悪魔が逃げ出してしまいました。そうです。悪魔は、神様にお祈りする人には絶対に勝てないんです。だって、神様は悪魔より強いし、神様はお祈りする人の味方なのだから。 | |
| [照明。スポット消灯。もしあればスモーク] | |
| その後、二人がどうなったかというと、ユダは、 | |
| [ユダ、下手からよろめくように登場、舞台奥に倒れる] | |
| どうしたらいいかわからなくなって、死んでしまいました。ペトロのように、ゆるしてくださいとお祈りすることができなかったのです。ペトロはというと、それから3日目のこと。 | |
| [下手からイエス、ゆっくり登場。上手からペトロ登場し、イエスのあしもとにひれ伏しながら次のセリフ] | |
| 本当に本物のイエス様だ。本当に生き返ったんだ。 | |
| ペトロ。あなたの信仰がなくならないようにと、私は祈っていました。 | |
| イエス様、わたしはあなたを裏切ってしまいました。 | |
| ペトロ、もうよい。わたしはいつまでも、お前とともにいるのだから。 | |
| [了] |