ひとつの星

登場人物

メモ

台本

ナレーター

今から3千年以上昔、イエス様が生まれるより千年以上も前のこと。エジプトで奴隷となっていたイスラエルたちは、主に救い出されてエジプトを脱出しました。追ってきたエジプト軍も、イスラエルを攻撃した国々も、イスラエルの神である主の前に敗北したので、「イスラエル人の神は恐ろしいほど強い」ということが、イスラエル人が進んでいくよりも早く伝えられていきました。
そしてイスラエルが「約束の地」カナン地方に近づいたとき、その地のモアブ人はイスラエルを恐れ、戦う勇気もなくしていました。

バラク王

(登場)このモアブにイスラエルがやってくる。偉大なエジプトを撃退し、この地方の王たちを倒してきたイスラエルが。
私はイスラエル人など恐れはしない。しかしイスラエルの神は恐ろしい。私の軍隊は、あの恐るべき神が守るイスラエルに勝てるのだろうか。
(しばらく考え込んで)誰か、預言者バラムを呼べ。ユーフラテス川の町ペトルのバラムだ。モアブをイスラエルから守るには、バラムが必要だ。[22:5]

預言者バラム

(登場)王様。バラク王様。バラムが参りました。

バラク王

おお、バラムよ。よく来た。見ろ。エジプトからのぼってきたイスラエルだ。恐るべき神がイスラエルと共にいるために、あの民は私よりも強大だ。
(きげんを取るように丁寧に)そこでバラムよ。私のため、モアブのために、イスラエルを呪ってくれ。そうすれば私はイスラエルを打ち破り、追い払うことができる。あなたが祝福したものは祝福を受け、あなたが呪った者は呪いを受けることを私は知っている。[22:5-6]

預言者バラム

王様。私は何かを自由に告げることはできません。神が私に与える言葉だけを私は告げるのです。[22:38]

バラク王

細かいことはよい。さあ、私のためにヤコブを呪え。イスラエルをののしれ。[23:7]

預言者バラム

(間を置いてから。遠くのイスラエルを見渡しながら)
神が呪いをかけないものに、私が呪いをかけることはできない。
神がののしらないものを、わたしがののしることはできない。[23:8]
見よ、あれは地上のどの民族とも異なる民。[23:9]
ヤコブの子孫は繁栄して、地の砂よりも多くなる。[23:10]

バラク王

(いらいらしながら)バラム。私はイスラエルを呪えと頼んでいるのに、なぜイスラエルが子孫繁栄するなどと祝福するのか。[23:11]
もう一度だ、イスラエルに呪いをかけろ!。[23:13]
そうすればいくらでも褒美をやろう。

預言者バラム

(間を置いてから)
神が祝福したものを、私が取り消すことはできない。[23:20]
ヤコブの子孫には災いはおこらない。
イスラエル人が思い悩むこともない。[23:21]
この民はライオンのように立ち上がって、敵を倒す。[23:24]

バラク王

(怒りながら)なぜだバラム。なぜイスラエルを祝福する。お前が祝福すれば、神に祝福されてしまうではないか。
イスラエルを呪え。呪うことができないなら、せめて祝福するな。[23:25]

預言者バラム

私は主が告げられたことだけをすると言ったではないですか。[23:26]
主が祝福せよというなら、たとえ王様が黙れと言っても祝福しなければならないのです。

バラク王

(怒りながら)口ごたえはいらぬわ!もう一度だけお前にチャンスをやる。押し寄せてくるあのイスラエルに、呪いをかけろ。

預言者バラム

これは私の考えを言うのではありません。神の言うことを聞き、全能者が見せるものを見る者として宣言します。[24:4]
(間を置いてから)
いかに良いことか。
ヤコブよ、あなたの天幕は
イスラエルよ、あなたの住むところは。[24:5]
(以下、ゆっくり強く)
わたしには彼が見える。しかし、今はいない。
彼を仰いでいる。しかし、間近にではない。
ひとつの星がヤコブから進み出る。
ひとつの笏、王のしるしが、イスラエルから立ち上がり、モアブを打ち砕く。[24:17]

バラク王

(激怒して)もう、よいわ。うせろ。褒美はやらん。命があるだけありがたいと思え。[退場]

預言者バラム

ひとつの星がヤコブから進み出る、とはどういうことだろう。
彼というのは誰のことだろう。
今ではないのか。後の時代のために、このことは書き記さなければ。(退場)

ナレーター

それから千年以上が過ぎたある時。

メルキオール博士

(登場)バルタザール博士、カスパール博士、いらっしゃいますか。

(バルタザール、カスパール、登場)

カスパール博士

メルキオール博士、どうしたのですか。

メルキオール博士

ごらんください、西のほうに星のような光り輝くものが。

カスパール博士

あれは?なんでしょう、今まで見たことがない。
星のようではあるが、空の星とは違う。
しかし地上であのような光は見たことがない。

メルキオール博士

あの方角は、ローマ帝国のユダヤ属州でしょうか。

カスパール博士

ユダヤ属州...
イスラエル人...
ヤコブの子孫...
もしかしたら!

メルキオール博士

どうしました?

カスパール博士

大昔の預言者バラムの言葉です。ユーフラテス川の町ペトルにいた、ベオルの子バラムは、こう告げています。
「今ではないいつか、
ひとつの星がヤコブから進み出る、
ひとつの笏がイスラエルから立ち上がる」
と。

バルタザール博士

それではあの星は、イスラエルに新しい王様が現れたことを知らせるものだと?

カスパール博士

そうだとしたら、私たちはその王様に会いに行かなければなりません。私たちが千年以上も受け継いできたことが今こそ実現するというなら、私たちこそが新しい王様の登場を祝いに行かなければ。

バルタザール博士

行きましょう。王様にふさわしい贈り物を準備して。

(カスパールとバルタザール退場)

メルキオール博士

(客席に向かって)皆さんも、新しい王様に会いにいきませんか。(退場)

ナレーター

こうして3人の博士は、星のように輝く光に導かれ、ベツレヘムへ、新しい王様であるイエス様に会いに旅立っていったのです。

(おしまい)

この作品について

学者たちを導いた「星」については、「星のようだが星ではない光」として表現しました。マタイ伝が伝えているこの「星」の様子、

などから、この「星」は天体としての星ではなくシャカイナ・グローリー(神の臨在が人の目に見えるかたちであらわれた火や光などの現象)としての「輝き」「光」であるという解釈です。

この解釈を含めて、本作品は、メシアニックの聖書学者アーノルド・フルクテンバウム博士の著書「メシア的キリスト論 旧約聖書のメシア預言で読み解くイエスの生涯」から、特に「付録4 東方の博士はどのようにして知ったのか」からヒントを得て作成しました。
参考までに一部を引用します。

マタイ2:1-12には、バビロンと二重のつながりがある…一つはダニエル書で、ダニエルはユダヤ人の王が生まれるのは何年先になるかを明かしていた。もう一つは星のことを預言したバラムで、バラムもバビロンの占星術師一門に属していた。メシアの誕生に関係する星が現れるという啓示は、バビロンの占星術師バラムによってもたらされた。そして当然、バラムはそのことを仲間の占星術師たちにも伝えただろう。

この解釈には、ダニエル書9:24-27の「七十週の預言」の「週」をどう解釈するかということと、バラムが「ユーフラテス川」の人であるといっても新バビロニアとは時代が離れすぎではということが、気になるといえば気になります。
しかしこうとでも考えないと、なぜ東の博士たちが星を追ってユダヤにきたのかというのも理解しにくいため、今回「可能性としてありえる話」として取り上げました。

作成:2020年12月15日

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