平和を実現する者

〜神に愛される者として隣人を愛する〜

登場人物


[ナレーションの間にサウルとヨナタン登場。]

ナレーター

イスラエルの最初の王様は、サウルという人でした。イスラエルの人たちが神様に「私たちを外国から守ってくれる強い王様をください」とお願いしたとき、神様はサウルを選んだのです。サウルはイスラエルの兵隊たちを連れて外国と戦い、がんばって国を守っていました。

家来1

[声のみ]ダビデが勝った、ペリシテ軍の巨人ゴリアテを、ダビデが倒したぞ。

家来2

[声のみ]今がチャンスだ、ペリシテ軍をやっつけよう。

[下手からダビデ登場]

ダビデ

サウル王様、ただいま戻りました。

サウル

よくやった。イスラエルのピンチをお前が救ってくれたのだ。

ダビデ

私ではなく、私たちの神様がイスラエルを救われたのです。

サウル

そうか。神様がともにおられるダビデよ、今日から私の家来になれ。

ヨナタン

[ダビデの手を取って]この国を守るために力を貸してほしい。

ダビデ

ヨナタン王子様、喜んで。すべて神様の御心のままに。

[ナレーションの間に全員、上手に退場]

ナレーター

この日からダビデは、ヨナタン王子と大親友になりました。そして戦士たちの隊長となって、イスラエルを守るために大活躍したのです。 ところが、あまりダビデが活躍するものだから、イスラエルの国の人たちはこんなことを言うようになったのです。

[上手より家来1、家来2、会話しながら登場]

家来1

サウル王様より、ダビデ隊長のほうが強いんじゃないのか

家来2

それにかっこよくて、勇気もあるし。

家来1

いっそのこと、隊長が王様になればいいんだよ。

[ダビデ上手から登場]

ダビデ

おい、聞こえたぞ。なんてことを言うんだ。サウル様は神様が選んで決めた王様じゃないか。神様が決めたことに文句を言うのか?

家来2

でも隊長、国中のみんなが言ってますよ、「サウルが敵を千人殺すあいだに、ダビデは敵を一万人殺した」って。やっぱり隊長が一番ですよ。

[会話しながら下手に退場。ナレーションの間にサウルが上手から登場]

ナレーター

「ダビデが王様になればいい」なんて噂を聞いたら、サウル王は楽しいはずがありません。それでダビデが活躍するほど、サウル王はだんだんイライラするようになりました。そんなサウルのところに、心の中の悪い思いを大きくするのが好きな悪魔がやってきたのです。

[サウル、舞台を歩き回りながらセリフ。その間に悪魔が下手から登場してサウルの背後につきまとい、サウルの独り言を誘導する]

サウル

なんということだ。王様は私なのに、みんなダビデの話ばかり。

悪魔

困ったことだね

サウル

困ったことだ。どうしたらいいのだろう。

悪魔

ダビデがいなくなればいいんだよね。

サウル

ダビデがいなくなればよいのだが。

悪魔

今はペリシテと戦争中だから。

サウル

今はペリシテと戦争中だから、ペリシテが攻めてきたところにダビデを行かせよう。ダビデが勝ってペリシテを追い返せばいいし、もしかしたらペリシテがダビデを殺してくれるかもしれない。

悪魔

ダビデが勝っても負けても得だね。

サウル

ダビデが勝っても負けても得だ。おい、ダビデはいるか。

[下手からダビデ登場。悪魔は下手に退場。上手からヨナタンとミカル登場し、サウルの背後に控える。]

ダビデ

王様、おん前に。

サウル

最近またペリシテが攻めこんできているので、追い払ってこい。

ダビデ

は。承知しました。神様が私に味方してくださるから、簡単なことです。

サウル

今度勝ったら、褒美にミカル姫を与えよう。

ダビデ

え?そんな、私のような貧しい羊飼いに?

ヨナタン

身分なんか関係ないさ。ミカルは君のことが前から好きなんだよ

ミカル

もう、お兄様ったら!

ダビデ

と、とにかく行ってきます。

[ダビデ、下手に退場。サウルが上手に退場しかけたところで、ダビデはすぐに下手から登場]

ダビデ

ただいま戻りました。

サウル

[ずっこけながら]は、早っ!

ダビデ

今日も神様がともにいてくださったので、ペリシテ軍をやっつけることができました。

ヨナタン

やったなダビデ。さあミカル、お前はダビデのお嫁さんになるんだ。

ミカル

ダビデ様![抱きつく]

ダビデ

姫様![抱きしめる]

ヨナタン

おいおい、まだ早いよ。さあ、結婚式の準備だ。

[ナレーションの間にヨナタン、ダビデ、ミカル、下手に退場。サウルはナレーションの間、呆然とダビデたちを見送る。]

ナレーター

こうしてダビデは、ミカル姫と結婚したのです。結婚してサウル王の家族となったダビデは、大親友のヨナタン王子をお兄さんとして、サウル王をお父さんとして、今まで以上に王様と国のためにがんばろうと心に決めました。けれどサウル王のほうはというと…。

サウル

おもしろくない!くっそー、今度こそ…。おいダビデ、ダビデ!

[ダビデとヨナタン、下手から登場]

ダビデ

王様、おん前に。

サウル

西の谷にペリシテが来た。やっつけてこい。

ヨナタン

父上、ダビデは新婚ですよ。「結婚して一年以内の者は戦争に行かせてはいけない、それよりも奥さんを喜ばせなければいけない」と聖書に書いてあるじゃないですか。

申命記24:5

ダビデ

王子、いいんです。神様がともにいてくだされば、すぐですよ。

[ダビデ、下手に退場。サウルが上手に退場しかけたところでダビデはすぐに下手から登場]

ダビデ

ただいま戻りました。ペリシテ軍は西の谷から退却しました。

サウル

[ずっこけながら]は、早っ!ええい、次は南の野原だ。

ダビデ

は、ただちに!

[ダビデ、下手に退場。サウルが上手に退場しかけたところでダビデはすぐに下手から登場]

ダビデ

ただいま戻りました。私たちがかけつけただけで、ペリシテは逃げ出しました。

サウル

[ずっこけながら]は、早っ!ううむ、次は北の森だ。アブネル将軍が苦戦しているから助けてこい。

ダビデ

はい!

[ダビデ、下手に退場。サウルが上手に退場しかけたところで、ダビデとアブネルがすぐに下手から登場]

ただいま戻りました。北の森のペリシテ軍を、アブネル将軍とともに全滅させました。

サウル

[ずっこけながら]は、早っ!ううむ。

アブネル

これでしばらくは、わが国は安全でしょう。

ヨナタン

父上、もうよろしいでしょう。ダビデを家に帰らせてあげてください。ミカルも待ってます。

[悪魔、下手から登場、サウルの背後に立つ]

サウル

ううむ。ダビデよ、ご苦労だった。しばらく休むがよい。

ダビデ

ありがとうございます。

[ダビデ、下手に退場]

悪魔

[サウルに向かって。以下、悪魔の声はヨナタンとアブネルには聞こえていない]ペリシテもたいしたことないな

サウル

ペリシテもたいしたことないな

アブネル

いえ、ペリシテ軍は強くて手ごわいです。ダビデがすごすぎるのです。

悪魔

そう、ダビデはすごすぎる。だから危険なんだ。勝つたびにダビデの人気は高まるばかりだ

サウル

すごすぎるから危険なのだ。

ヨナタン

危険ってどういういことですか?父上はまるでダビデをわざと危険な目にあわせているみたいじゃないですか。

悪魔

もうペリシテはあてにならない。こうなったら

サウル

[ヨナタンの声が聞こえなかったように]もうペリシテはあてにならない。こうなったら…。命令だ、ダビデを殺せ!

ヨナタン

な、なんていうことをいうんですか父上。

アブネル

王様、一番活躍してきたダビデをなぜ殺さなければならないのですか。

サウル

やつは王の座を狙っている。このまま生かしておけば、私をたおして自分が王になろうとするだろう。

ヨナタン

ダビデはそんなことを考えるようなやつじゃ…

アブネル

[ヨナタンをさえぎって]王様、それは命令ですね。ではこのアブネルにお任せを。

ヨナタン

アブネル将軍、父を、王をとめてくれ。ダビデがどんないいやつか、一緒に戦ったあなたにはわかるだろ。

アブネル

王子様、サウル様は神様が王様に選んだ方です。だから私は今まで、サウル王様の言葉を神様の言葉だと思って従ってきましたし、これからもそうするつもりです。[サウルに]では、ただちに。

[アブネル、下手に退場]

ヨナタン

なんてことだ。ダビデとミカルに知らせなきゃ。

[ヨナタン、急いで下手に退場]

サウル

アブネルだけに任せてはおけん。私も出陣する。必ずダビデを殺さなければ。

[サウル、下手に退場]

悪魔

[上手に退場しながら]うまくいった、うまくいった。

ナレーター

こうしてサウルは、ダビデを殺そうと狙い始めたのです。ヨナタンが知らせてくれたので、ダビデは危ないところで逃げることができましたが、この日から、サウル王から逃げ回らなければならなくなりました。

[下手からダビデと家来1登場]

ダビデ

危ないところだった

家来1

隊長、どうして私たちが逃げなきゃならないんです。隊長は何も悪いことはしていないじゃないですか。

ダビデ

わからないよ

家来2

[下手から駆け込んできて]隊長、サウル王が追いかけてきました。すぐそこまで来ています。

ダビデ

逃げるぞ!

[ダビデたち、上手に走って退場。下手からサウルとアブネル登場]

サウル

ええい、またも逃げられたか。

アブネル

[上手を指しながら]向こうです、今から追えば追いつけます。

[サウルたち、走って上手に退場。間。上手からダビデたち走って登場]

家来1

[走りながら]隊長、こっちです。

[ダビデたち、走って下手に登場。上手からサウルたち走って登場]

サウル

[走りながら]待てー!

[サウルたち、走って下手に退場。間。下手からダビデたち、あたりをうかがいながら登場]

ダビデ

大丈夫そうだな。

家来2

こうなったら、待ち伏せしてこっちからサウル王をやっつけるしかありませんよ。

ダビデ

馬鹿なことを言うな。サウル様は神様が決めた王様だ。おまえは私に、神様にさからえというのか。

[下手からサウルとアブネル登場]

サウル

見つけたぞダビデ

ダビデ

逃げるぞ!

[ダビデたち、上手に逃走。サウルたち、追って上手に走り去る。間。ダビデたち上手から登場。]

ダビデ

[息を切らせて]この洞窟までくれば

家来1

念のため、もっと奥へ隠れましょう。

[ダビデと家来たち、下手へ退場。サウルとアブネル、上手から登場]

サウル

[舞台中央へ歩きながら]逃げられたか

アブネル

まだ近くにいるとは思うのですが。王様はこの洞窟でお休みになってください。私は家来たちを偵察に行かせてきます。明日またダビデを探しましょう。

サウル

そうするか。

[アブネル、上手に退場。サウルは舞台で横になって寝る。間。下手から家来1,2登場]

家来1

[舞台中央をのぞきこむようにしながら]とうとう、こんなところまで追っかけてきやがったか。

家来2

[舞台中央をのぞきこむようにしながら]でも寝てるな。今がチャンスかも

家来1

やるか?

家来2

やろう。このままじゃ隊長が危ない。

[家来たち、忍び足でサウルに近づく]

ダビデ

[下手から出てきながら]待て!王様に何をする気だ!

家来たち

隊長!

ダビデ

王様に手を出すなと言っただろう。

家来2

でも王様はあなたを殺そうとしているんですよ。黙って殺されてやろうとでもいうつもりですか。

家来1

あなたは何も悪くないのに。王様が憎くないんですか。どうして平気なんですか。

ダビデ

平気なわけないだろ。私だって、なぜ自分がこんな目に会わなきゃいけないんだと思ってるよ。

家来1

だったら、なぜ。

ダビデ

私が神様を愛しているからだ。神様は私を愛してくださり、サウル王様をも愛しておられる。神様に愛されている王様を、殺していいはずがないだろ。

家来2

でも王様は神様を愛しているんですか?もしそうならどうして、神様に愛されている隊長を殺そうとするんですか。

ダビデ

王様がどう思っているかではなく、神様がどう思っているかが大事なんだよ。

家来1

隊長が殺せないなら、私が殺します。隊長はあっち向いててください。

ダビデ

ダメだ。なあ、お前たちは私が好きか?

家来1

当り前です。なんのためにここまで隊長に従ってきたと思うんですか。

家来2

隊長が好きだから、隊長を狙う王様をこのままにしておくわけにいかないんです。

ダビデ

そうか、だったら、私のことを好きなら、私の大事な王様を大事にしてくれないか。

家来1

そんな…

ダビデ

王様は、私の妻ミカル姫のお父さんだ。私の大親友ヨナタン王子のお父さんだ。お前たちは私のことを好きだと言ってくれたな。だったら、私の妻のお父さんを、私の大親友のお父さんを、愛してくれないか。

[家来たち沈黙]

ダビデ

正直に言って、私も王様をうらんでいる。だけど私は神様を愛しているから、神様が愛している王様を愛そうと思う。

家来2

わかりました。はっきり言って、私は王様が大嫌いです。だけど隊長が王様を愛するというなら、隊長を愛しているから王様のことも愛することにします。

家来1

でも隊長、自分が殺されても、そこまでしなければならないのですか。

ダビデ

私の命がどうなるかは、神様だけが決めることができる。神様が私を生かすと決めたなら、誰も私の命を奪うことはできないさ。もし誰かが私の命を奪うなら、それは神様がそのように決めたということ。私は神様が守ってくださると信じるだけだよ。さあ、行こう。

マタイ10:29

[ダビデと家来たち、下手に退場]

アブネル

[上手から駆け込みながら]王様、たいへんです。起きてください。

サウル

[起きあがりながら]何事だ

アブネル

ペリシテ軍がまた攻めてきました。ダビデどころじゃありません、急いでお城にお帰りください。

サウル

なんだと!

[ナレーションの間にサウルとアブネル、上手に退場]

ナレーター

サウル王が帰って行ったので、ダビデたちは危ないところで助かりました。ダビデが、自分が神様に愛されている者として、神様に愛されているサウル王を愛したので、神様がダビデを守って逃げさせたのです。 みんなにも、もしかしたらいやなやつとか、「あの人がいなくなればいい」と思うような相手がいるかもしれません。だけど神様にとっては、みんなのことも、その相手のことも、とても大切なのです。もしその相手が神様を知らなくても、神様はすべての人を大切に思っているのです。もしみんなが誰かをゆるせないと思っても、神様のことを好きなら、神様が大切にしているその相手のことをみんなも大切にしてください。まず私たちが相手を大切にすることが、平和をつくるためのはじめの一歩なのです。

1サムエル26:24