熱闘!ブロンコス1996

第19回:第17週


レギュラーシーズン第17週、1年間の全てが今日決まる。AFCからプレイオフに行けるのはあと3チームのみ。これをビルズ、コルツ、チーフス、そしてジャガーズが争う。

水上は西村の部屋に上がるなり、チーフス対ビルズの直接対決にアクセスした。チーフスが勝てば90年代に入って以来連続プレイオフ出場、ビルズが勝てば、この10年間で9回目の出場という、プレイオフ常連同士の戦いは、ビルズの本拠地で行われた。

結果は、水上の願いもむなしく、チーフスのオフェンスがまったく奮わずビルズの勝利。

この敗戦でチーフスのレギュラーシーズンの最終成績は9勝7敗となった。コルツは今日ベンガルズに破れて9勝7敗。しかし、先週の直接対決でコルツがチーフスに勝っているため、勝率が同じでもコルツの方が順位は上になる。よって、コルツはジャガーズの結果を待つまでもなく、プレイオフ出場を決定した。

チーフスがプレイオフに出るには、ジャガーズが負けて8勝8敗止まりになってくれなければならない。

祈るような気持ちで、ジャガーズの結果を検索する。ジャガーズは先週まで4連勝、新造チームに5連勝はあるまいと思いたいところだが、今週の相手はファルコンズだ。めぐみには悪いが、今年のファルコンズではジャガーズに勝つには役者が不足か?

こういうときは、得てして悪い予想が当たるものだ。

Jacksobille 19, Atlanta 17

「これで決まったか。水上のやつ、今頃泣いてるぞ」

正木はオフィスのパソコンの画面を見ながらつぶやいた。ジャクソンビル・ジャガーズが自力で滑り込んだことにより、AFCのプレイオフ進出チームは、

地区優勝一位ンバー・ブロンコス(西:13勝3敗)
二位ニューイングランド・ペイトリオッツ(東:11勝5敗)
三位ピッツバーグ・スティーラーズ(中:10勝6敗)
ワイルドカード枠一位バッファロー・ビルズ(東:10勝6敗)
二位ジャクソンビル・ジャガーズ(中:9勝7敗)
三位インディアナポリス・コルツ(東:9勝7敗)

と決定した。

「正木さぁん、ブロンコスどうでしたぁ」

藤代がきいてきた。

「あまり聞かれたくないんだけどな」

「えー、負けちゃったんすかぁ」

正木が画面を切り替えると、San Diego 16, Denver 10と表示された。

「あれま!」

「どうもこのところ、エルウェイはじめ主力を温存しているらしいんだよ」

「そういえば、先週もぎりぎりの勝ちでしたよね」

最近のブロンコスは得点が、今週10点、第16週24点、第15週6点と、今一つ攻撃に爆発力がない。

「第一シードだから来週は試合ないスよね。試合勘みたいなところは大丈夫なのかな」

「まあ、ランニングバックのディビスも元気なようだし、スーパーボウルに届くのは間違いないだろう」

T.ディビスは今週も出場し、ルーキーイヤーの去年に続いて二年連続の1000ヤード突破を記録した。この段階で、今年のリーディングラッシャー(一番距離を稼いだランナー)である。ディビスを抜く可能性があるのは、明日マンデーナイトゲームに出るライオンズのB.サンダースだけだ。

そのマンデーナイトゲーム。ライオンズの相手は49ersだった。49ersはプレイオフ進出を決めてはいるが、地区優勝すればプレイオフ一回戦免除だが、そのためにはライオンズに勝利した上で、パンサーズが負けてくれなければならない。一方のライオンズは、チーム状態もぼろぼろで、すでにヘッドコーチの交代が発表されている。モメンタムは明らかに49ersが上である。

ヘッドコーチも、そんな状況は端から承知ということか、勝利よりもサンダースの記録に賭けてきたような展開となった。

サンダースは走った。走って走って、試合は14対24と破れたが、ディビスを抜いて、今年度リーディングラッシャーのタイトルをもぎ取ったのである。ヘッドコーチの、デトロイトのファンへのこれが最後のプレゼントとなった。

49ersの勝利で、パンサーズがNFC西で地区優勝するにはスティーラーズを倒さねばならなくなったが、ホームゲームの有利もあって18対14の勝利。なんと、結成2年目のチームが強豪49ersを押さえての地区優勝である。しかもプレイオフの1回戦免除、2回戦の地元開催権を手にしてしまった。さらにこれで今季地元で無敗という結果になったのだから、プレイオフ2回戦も自信を持って迎えられる。

地区優勝を逃した49ersはワイルドカード一位として、一回戦からの出場である。

先週までにプレイオフ一回戦免除と二回戦の地元開催権を確定していたパッカーズは、パンサーズが12勝となったことで、カンファレンス決勝のホーム開催権が今日の結果にかかることになったが、余裕でバイキングスを撃破。NFC単独トップの13勝で、プレイオフ第一シードを確保した。バイキングスはワイルドカード3位が決定。

パッカーズが地区優勝1位、パンサーズが地区優勝2位となったことで、NFC東の地区優勝を決めていたカウボーイズは第三シードとなり、今日の結果に関係なく一回戦からの出場、ホームでバイキングスとの対戦が決定した。勝てば二回戦はパンサーズとアウェイで戦うことになる。今日の結果が、数字の上ではあまり意味をなさないということが、モメンタムの喪失につながったのか、ワシントンに乗り込んでのレッドスキンズ戦は37対10で敗退。一発勝負のプレイオフに不安を残すことになった。

一方、同様に順位が確定していたイーグルスは、カージナルス相手に快勝。ワイルドカード二位で、プレイオフ一回戦はアウェイでナイナーズ戦だが、今日の勝利をジャンプ台にしたいところだ。

地区優勝一位グリーンベイ・パッカーズ(中:13勝3敗)
二位カロライナ・パンサーズ(西:12勝4敗)
三位ダラス・カウボーイズ(東:10勝6敗)
ワイルドカード枠一位サンフランシスコ・49ers(西:12勝4敗)
二位フィラデルフィア・イーグルス(東:10勝6敗)
三位ミネソタ・バイキングス(中:9勝7敗)

「というわけで、両カンファレンスとも出そろったところで、すばりスーパーボウルの対戦カードと優勝チーム、あとMVPの大予想大会ぃぃぃぃぃっ!」

「ひゅー、どんどんどんどん、パフパフパフ」

本人はスターダストレビューの根本要の声まねというが、どうしても峰不二子と話すときの五右衛門の声にしか聞こえない西村の音頭とりにあわせて、水上と正木が鳴り物の声まねをした。

「ではみなさん、答えを一斉に、ドン」

「クイズ番組か?」

四人がクロッキー帳に書いた予想をせーので出し、見比べた。

「えー、なんでみんないっしょなの」

ペイトリオッツ対バンサーズと書いためぐみ以外全員が、組み合わせはブロンコス対パッカーズだった。ただしブロンコスの勝ちは正木のみで、西村と水上はパッカーズ勝利の予想。

「なんで?」

「いや、なんでって、順当に行くとパッカーズ対ブロンコスだよ。説明したじゃん」

「だって、ブロンコス調子悪いじゃない。ペイトリオッツはぐーっとこう、いい感じでしょ。で、どかんと迎撃しちゃおうってわけ」

「パンサーズは?」

「猫、好きだから」

一同、吉本新喜劇のように雪崩を打ってずっこけた。

「ならいっそ、ジャガーズ対パンサーズにすればいいのに」

「そう思ったんだけど、ジャガーズはプレイオフ一回戦からの出場だし。一回戦からスーパーボウルまで行くのは大変だって、ミキが」

「ヨシテルだってば!」

水上美輝ががなった。

「しかし正木も、本当にブロンコスがパッカーズに勝つと思う?」

西村が意地悪く聞いた。第15週のブロンコス対パッカーズ戦で、主力を温存したとはいえブロンコスが大負けしたことが、予想の大きな材料になっているのだ。もちろん正木もそのことは承知だ。

「戦力は充実しているからね。二回戦の相手がビルズの場合でも、マイルハイでやるなら苦戦はないだろうし。万一ジャガーズなら楽勝、負傷者も疲れもなくベストコンディションでスーパーボウルに乗り込むさ」

「ふーん」

「あのさ、正木がブロンコスを応援するのはわかるけど、何か賭けるとしたらそれでもブロンコス優勝を推す?」

「グッ!」

顔をのぞき込んで聞いてきためぐみに、正木は声を詰まらせた。

「いい質問だ。どうする正木」

「う〜。でもパッカーズも、楽にはスーパーボウルに行けるわけじゃないし、ある程度戦力を消耗していれば」

顔をゆがめて苦しむ正木。

「でもナイナースもカウボーイズも17週から休みなしで一回戦を戦ってくるだろ。パッカーズはずっとホームゲームだし、余裕持ってスーパーボウル来るんじゃないか?」

「よし、賭けよう。優勝がブロンコスか、ペイトリオッツか。パッカーズの場合はどうする?」

すでにパッカーズの優勝が決まったような顔を、西村は水上に向けた。

「MVPも、二人ともファーブだし、点差にしようか」

「OK」

二人はクロッキー帳に点差の予想を書き、せーので出した。水上は6点差、西村は17点差だ。

「して、そのココロは?」

めぐみがまず、西村に聞いた。17点差は、タッチダウン2本+フィールドゴール1本の差だ。

「第15週の結果が41対6で35点差だろ。ブロンコスの主力が出てきても、これくらいはいくんじゃないか」

「僕は、試合開始早々にエルウェイが超ロングパスで先制すると思うんだ。でもその後はファーブが着実に得点して、ブロンコスは要所でミスして、前半である程度差がつくんだけど、後半に入ってブロンコスのディフェンスが立ち直って、膠着状態になって、終了5分前で3タッチダウン差ぐらいなのね。で、ブロンコスがタッチダウンを返して、次のパッカーズの攻撃をターンオーバーに持ち込んで更にタッチダウン。2ポイントコンバージョン成功で、残り2分で6点差。ところがオンサイドキックを失敗して万事休す、っていうところだと思うんだけど」

「ドラマ描くねー」

水上の予想は、まるで映画のようだが、ブロンコスの負けパターンとしてはどこか納得してしまうものがある。

「リ、リアルすぎる」

正木が頭を抱えた。

「でもありそうでしょ」

「でもよ、14点差からタッチダウンして、2ポイント狙うか?」

正木が食い下がる。

「その裏をかこうとすんじゃないかな」

夜は更けても、キリなく予想大会は続くのであった。

次週(プレイオフ一回戦・ワイルドカードゲーム)

−To be continued.−


注記

ニューイングランド・ペイトリオッツ

AFC東地区所属。ヘッドコーチは昔ジャイアンツをスーパーボウル優勝に導いたビル・パーセル。チーム名は愛国者の意で、湾岸戦争で有名になったパトリオットミサイルと同じ言葉(だからめぐみが「迎撃」と言ったのだ)。

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