熱闘!ブロンコス1996

第18回:第16週


レギュラーシーズンもいよいよ第16週、残すところ今週も入れてたった2試合である。

最悪のチーム状態ながら、過去4年間で3度スーパーボウル優勝したカウボーイズは、先週プレイオフ出場を決めたAFC東地区のペイトリオッツと対戦。12対6という、先週に続く盛り上がらない試合ながらも勝ちを納めた。両チームとも得点はフィールドゴールのみ。カウボーイズが勝てたのは、ディフェンスがインターセプトを3回も決めてくれたおかげである。

地区2位を追走していたレッドスキンズがカージナルスに僅差で破れ、地区優勝どころかプレイオフ出場の夢も絶たれたため、これでどうにか地区優勝。選手はぼろぼろ、選手とコーチの仲はがたがた、それでもなんとかディフェンディングチャンピオンの面目を保ったというところである。

名将ジョンソン時代の遺産をスウィッツァーヘッドコーチになって食い潰しつつある感があるが、まだ底力は残っているらしい。いや、こういう展開でも勝ってしまうのが実力というものなのかもしれない。

NFC西地区の優勝争いは、パンサーズがレイバンズを、49ersがスティーラーズをそれぞれ破り、両チームとも11勝4敗で並んだまま、最終週に結果を持ち越した。パンサーズは今季49ersに2勝しているため、来週スティーラーズにも勝ってしまうと、創設2年目にして地区優勝という快挙になる。もし負けたとしても、49ersがライオンズに負ければ同じ結果だ。

地区優勝できなかった方も、11勝ならワイルドカードのトップ当選となる。とりあえずは両チームともプレイオフ出場を決めており、中地区優勝のパッカーズ、東地区優勝のカウボーイズと併せてプレイオフ出場6チームのうち4チームが決定した。

残りの2つは、まず土曜日のナイトゲームで、イーグルスがどん底ジェッツを相手に21対20で辛勝してプレイオフ出場権をゲット。ジェッツはこれで1勝14敗、ヘッドコーチのコータイトは、来週の最終戦を残して、このイーグルス戦後に解雇された。

バイキングスはバッカニアーズを破って9勝目で、レッドスキンズが前述の通り自滅したおかげで滑り込んだ。

というわけで、NFCのプレイオフ出場チームは最終的に、西地区からカウボーイズ(10勝)、イーグルス(9勝)、中地区からパッカーズ(12勝)、バイキングス(9勝)、東地区からはパンサーズ(11勝)、49ers(11勝)。

これで大勢は決した。と言いたいところだが、最終週も熱い。東地区の優勝はまだ決まっていないが、西地区優勝のカウボーイズが来週勝ったとしても11勝止まりのため、パンサーズか49ersが12勝目を上げた場合、地区優勝した方は1回戦をシードされることになる。カウボーイズが1回戦をシードされるためには、パンサーズも49ersも負けてくれた上で、レッドスキンズを78点差で破らなければならないが、これはほとんど無理だろう。

パッカーズとて、楽観している余裕はない。現在はトップの成績だが、パンサーズが12勝で地区優勝してきた場合、パッカーズが18点差以上でバイキングスに負けると、プレイオフの地元開催権を失う可能性があるのだ。


「で、どう思う?」

12月17日(火)、マンデーナイトの結果が出たところで、4人が西村の部屋に集まっていた。今日のテーマはプレイオフの展望だ。

「ナイナーズとカウボーイズがやっぱりだめだろ。となると、前評判通りパッカーズがシード1位からスーパーボウルへ直行じゃないかな」

すでに西村の関心はスーパーボウルに移っているらしい。

「パンサーズはだめか?」

と、実は隠れパンサーズファンの正木。

「パンサーズは確かにすごいけどさ、それより49ersとカウボーイズが自滅したって感じでしょ。実力で上がったパッカーズで決まりでしょ」

「でも来週は?49ersはライオンズに楽勝だろうけど、パンサーズはスティーラーズだよ」

「いや、俺もNFC決勝はパッカーズ対パンサーズだと思う。で、二年目チームが奇跡のスーパー進出、と」

正木はあくまで、AFCはブロンコスとしても、NFCはパンサーズにがんばってほしいらしい。

「仮に地区優勝できなかったとしても、パンサーズはワイルドカードから勝ちあがる力はある。実際、ナイナーズも含めて、パッカーズ以外は敵じゃないだろ」

確かにパンサーズはレギュラーシーズンでナイナーズに二勝したし、バイキングスとイーグルスよりも格が上という気はする。

「でも、地区優勝できないとワイルドカード一位だから、パッカーズがシード一位だと大変だよ。レギュラーシーズンが終わって休みなしで一回戦、準決勝でパックスで、決勝でナイナーズって、勝ち残れる?」

「あれっ?」

水上の言うとおり。バイキングスとイーグルスがとっとと負けると仮定すると、パンサーズはパッカーズに勝った上で、決勝で49ersとやることになる。話が行き詰まったところで、めぐみが話題の転換を図った。

「やっぱり、来週の結果を見てプレイオフの組み合わせが確定しないと、予想は難しいんじゃない?」

正木としては、隠れパンサーズファンであること、ブロンコスを先週ボコボコにしたパッカーズよりもパンサーズの方がスーパーボウルの相手としてはイージーに思えることから、もう少しNFCの話を続けたかった。が、水上としては、チーフスが本当にプレイオフに行けるのか早く確認したいところだし、あとの二人はNFCはパッカーズでほぼ決まりと思っていたから、正木が異を唱える前に西村のパソコンはチーフスの試合結果に画面を切り替えていた。

今週のチーフスの試合はホームグランドのアローヘッドスタジアムに、AFC西地区からプレイオフを狙うコルツを迎えた。先週までで、コルツは8勝6敗、チーフスは9勝5敗である。チーフスとしては、勝てばプレイオフ進出という状況なのだが、このところ勝ちと負けを繰り返し、水上をやきもきさせているのだ。気になるのはQBボウノとチームがギクシャクしているように思えること。シーズン序盤の連勝中は、今年はボウノの年だと思ったのに、どうもかみ合ってない。

「コルツもプレイオフに向けて必死だからね、やばいかもよ」

西村が意地の悪い冗談を言うのを聞こえない振りした水上であったが、出てきた画面を見たとたん、西村にくってかかった。

「そういうこと言うから本当になっちゃうんだぞ!」

「へ?」

内心は西村も正木もチーフスの勝ちだろうと思っていたのだが、あわてて画面を覗き込む。そこには

  "Colts 24, Chifs 19"

と表示されていた。

「負傷者の代わりに出場したコルツのルーキーが、タッチダウンパスを3本キャッチだって」

「チーフスどうしちゃったんだ」

チーフスはこれで6敗である。開幕ダッシュに成功した勢いは、どこに行ってしまったのか。

プレイオフ一回戦は、地区優勝三位チームのホームで対ワイルドカード(WC)三位、WC一位のホームで対WC二位という組み合わせになる。つまりWC3チーム中で、一回戦でホームグランドで試合できるのはWC1位だけなのである。ホームで試合することの有利はすでに述べてきたとおりだ。チーフスとしては、地区優勝をブロンコスに取られた以上、WC1位狙いの一手だった。

「他の結果はどうなった」

「マンデーナイトがビルズatマイアミ(ドルフィンズ)だったよな」

「今のドルフィンズじゃビルズを止められないだろ」

ビルズが勝てば、10勝目でプレイオフ当確だ。が、

「負けてるー」

「何っ!」

死んでいた水上が突然復活して会話に加わった。

「来週の組み合わせは?」

「チーフスがアウェイでビルズと直接対決だ。コルツはアウェイでベンガルズ戦」

ということは、チーフスがビルズに勝ってコルツがベンガルズに負けると、チーフスはWC一位ということになってくる。いや、東地区の地区優勝はまだきまっていないから、ペイトリオッツの結果にも左右されるから、まだわからないか。

ワイルドカード(WC)三位だと、プレイオフ一回戦で地区優勝三位とアウェイで対戦することになるが、WC一位ならWC二位のチームとホームで戦える。若干有利だ。

「まだ望みはあるんだね」

水上の表情に微かに安堵感が浮かんだ。男三人の後ろからめぐみがパソコンを覗き込んだのはその時だった。

「ねえ、チーフスもビルズもコルツもプレイオフ決定マークがついてないけど」

「?」

画面上、プレイオフが決まったチームにはx、地区優勝が決まったチームにはyなどとマークがついているが、めぐみが上げた3チームは無印だ。

プレイオフは先週までに進出決定していたブロンコス、スティーラーズ、ペイトリオッツと、チーフス、ビルズ、コルツの6チームに決まったと、男どもはいつの間にか思いこんでいたらしい。

「まだ他に絡んでるとこがあるのか?」

「あったっけ?」

しばしの沈黙の後、三人は顔を見合わせて同時に「まさか」と言った。

正木がマウスを動かして画面を切り替える。確かにもう一チーム、まさかとは思うがプレイオフ戦線に残っているのがいた。画面に表示されたのは、ジャガーズ対シーホークスの結果だった。

「ジャガーズが勝ってる!」

なんと二年目チームのジャガーズが、8勝目を上げていた。4勝7敗からレイバンズ戦、ベンガルズ戦、オイラーズ戦、シーホークス戦と4連勝だ。

「どうなるんだ」

「ちょっと待て。頭ン中、整理しよう」

AFCのプレイオフの残り枠は三。残っているのは、

の4チーム。

もしジャガーズが来週負ければ、あとの3チームは自動的にプレイオフ決定であるが、試合はホームゲームでファルコンズ戦である。

「めぐみには悪いけど、勢いを見る限りじゃジャガーズの勝ちだね」

と水上が命知らずな発言。が、妥当な線だろう。ジャガーズが9勝に乗せた場合、直接対決のビルズとチーフスは、勝った方が10勝目だからプレイオフ決定。コルツはアウェイでベンガルズ戦だが、

「なんか、ベンガルズは評価しにくいんだよな」

コルツは勝てば10勝目でプレイオフ決定だ。しかしシーズン前半はぼろぼろのベンガルズだったが、途中で監督が交代してからは破竹である。

「ようするに現時点では、チーフスとビルズの勝った方がプレイオフ決定と言うことしか決まってないわけね」

「そんなことはないんだ。仮にチーフスが勝って、あとの3チームが9勝で並んだとして、勝率が同じ場合はどっちが上とかって決まってるんだよね」

めぐみの問いに水上が答えたが、西村と正木は自信なさげに顔を見合わせた。

「覚えてる?」

「いんや。確か、」

西村が、結局自信なさげなまま記憶を引っぱり出そうとする。

「10段階ぐらいあるんだよな。直接対決で勝ってた方が上位とか、直接対決がなかった同士なら、共通の対戦相手に対する成績とか。カンファレンス内での勝率が上の方で、それも同率なら地区内の勝率が上とか。どういう優先順位だったか忘れたけど、最後まで同条件だと、最後はコイントスで決めることになる」

「そうそう、そんな感じ」

「思うんだけど、ジャガーズが来週9勝になってもプレイオフに出られないなら、今週の時点で全部決まってるんじゃない?ということは、来週9勝になったらジャガーズはプレイオフに行けるのよ」

めぐみが考え込みながら言った。

「え?えーと。そうかぁ?」

まだ頭の中が整理できないらしい。

「とにかく、チーフスは来週勝てばいいんだよ」

「そうしてくれ。ビルズがプレイオフに出てくるよりは、チーフスの方が相手にしやすい」

「あ、失礼な奴だな」

水上が正木に抗議したが、正木には言い分があった。ビルズというのは不思議なチームで、レギュラーシーズン中はそれほど強く見えなくても、プレイオフまで漕ぎ着けるとそこからが強いのだ。

「とりあえず来週だな」

西村が話題の収束を図る。が、まだ夜は浅い。今夜もまた、酒を片手に夜更けまで予想合戦が続くのだろう。

「なあ、ところで、ブロンコスは」

とっくにプレイオフ第一シードを決定しているブロンコスの話題は、ここまで全然出てこなかった。今週は憎きレイダースをホームに迎えているはずだ。

「そういえば、そんなチームもいたなあ」

西村がすっとぼけながらも、マイルハイスタジアムの結果を呼び出した。結果は24対19、ブロンコスが苦手を克服して、対レイダース戦今季二連勝となった。

「ま、こんなもんでしょ」

次週(第17週、レギュラーシーズン最終戦)

ブロンコス
vsチャージャース(チャージャースのホームゲーム)
チーフス
vsビルズ(ビルズのホームゲーム)
ジャイアンツ
vsペイトリオッツ(ジャイアンツのホームゲーム)
ファルコンズ
vsジャガーズ(ジャガーズのホームゲーム)

−To be continued.−

前へ 次へ