熱闘!ブロンコス1996

第15回:第13週


レギュラーシーズン第13週。

残り試合数は今週も含めて5試合のみである。ここまでくると、どのチームもシーズンの終わらせかたを考えるようになってくるのではないか。

下位チームであれば、勝ち越しまで手が届くのか。

勝率五割辺りのチームであれば、プレイオフあるいは地区優勝に手が届くのか。

地区首位を争っているチームであれば、逃げ切れるのか。あるいはホームアドバンテージをとれるのか。

第12週を終わって4勝7敗のジャイアンツとしては、勝ち越すためには残りを全勝しなければならい。が、全勝できるチームならこんな下位にいるわけがなく、今季はすでに何の目標もなくなっていた。

であれば、やることは上位いじめしかない。今週の相手は昨季のチャンピオンチームであるカウボーイズだ。

カウボーイズは第12週までで7勝4敗、去年スーパーボウルで優勝したチームとは思えない不調ぶりである。負傷者が出ていることは他チームも同様だが、レシーバーのエースであるアービンが薬物使用疑惑で開幕からの5試合を出場停止にされていたことが志気に影響したようだ。

ちなみに先週第12週までのNFCの各地区上位は次の通りだ。

東部 1位 49ers(8勝)
2位 パンサーズ(7勝)
中部 1位 パッカーズ(8勝)
2位 バイキングス(6勝)
西部 1位 レッドスキンズ(8勝)
2位 カウボーイズ(7勝)
イーグルス(7勝)

ライオンズ以下、5勝までのチームは絶望的と言って良かろう。勝ち星と勢いから地区優勝が確実と思われるのは、パッカーズのみ。カウボーイズも含め地区2位のチームにとっては、1位のチームがコケない限りは、ワイルドカードに残るしかプレイオフに出る道はないのだから、残り5試合をすべて勝つつもりで行かないとならない。

カウボーイズの執念が勝つか。ジャイアンツの意地が勝つか。

ジャイアンツディフェンスは、とにかくカウボーイズのランニングバックのスミスをマークした。ルーキーの時から毎年プロボウル(オールスター戦)に選出されているこのスーパーなランニングバックは、こいつが100ヤード走った試合はカウボーイズは負けないという話まであるくらいの選手である。カウボーイズはQBエイクマンを中心にパス攻撃は多彩なものがあるが、これまで述べてきたようにパス攻撃がフィニッシュブローとして効果を出すには、ボディブローのようなラン攻撃によるダメージが必要なのだ。

カットバック(守備の不意をついて急に走路を変更すること)を器用に繰り返し、減速することなく相手ディフェンスの間隙を走り抜ける小柄なこの男を、ジャイアンツとしては走らせてはならない。時として翻弄されかかりながらも、ジャイアンツディフェンスはこの作戦を遂行した。なんと、スミスはたった18ヤードしか走れなかったのである。

さらに奪ターンオーバー(パスインターセプトなど、相手のボールを奪って攻守交代にする)が5回という、およそジャイアンツらしからぬ絶好調ディフェンスがゲームを支配し、ファンブルリカバー(相手の落球を確保すること)からタッチダウンするなど、得点も上げるディフェンスがカウボーイズ相手に失点を6に押さえるという、ジャイアンツとしては非常な快挙をなしたのである。オフェンスも乗って、ファイナルスコアは

ジャイアンツ 20−6 カウボーイズ

と、大いに溜飲を下げたのであった。

試合後、カウボーイズのスウィッツァー・ヘッドコーチは、自分の指揮するディフェンディングチャンピオンチームを評して、「このチームは、いつ、どこと戦っても負けちまうだろう」などといっている。選手の方も、司令塔のエイクマンが以前「負けてもスウィッツァーのせいとは思わないし、勝っても彼の手柄とは思わない。仕事していると思えないんだ」と言っていたし、どうもこの”90年代最強チーム”とも”アメリカズ・チーム”とも言われた去年のチャンピオンは爆弾を抱えているようだ。

これでカウボーイズはプレイオフが遠のいたようであるが、レッドスキンズも49ers相手に延長の末に破れている。イーグルスは絶好調のアサイアソン率いるカージナルスに破れ、数字の上ではなんとカージナルスにもプレイオフの可能性が出てきてしまうという、大波乱の戦国状態となってしまったのだ。まるで、日大フェニックス凋落後の関東学生アメフトリーグのようだ。NFC東部の地区優勝は、このまま最終17週までもつれ込みそうだ。


先週までで2勝9敗と、すでに負け越しを決めているファルコンズの、残り5試合のテーマは、がむしゃらに順位を一つでも上げることしかなかった。1勝しかしていないジェッツは、チーム状態は悪くないのにまたも負け。これでファルコンズが最下位になることは、まだない。

しかもNFC西部では、先週の段階で、

8勝 49ers
7勝 パンサーズ
3勝 ラムズ
2勝 ファルコンズ
セインツ

という順位である。3位ラムズの今日の相手は優勝候補のパッカーズだから、ファルコンズが勝てば、よっぽどパッカーズが不運でない限り地区3位タイに浮上できるのである。

しかも相手は、1勝7敗という成績でヘッドコーチがシーズン途中で解雇されている、ドン底・ベンガルズである。ヘッドコーチが変わってから3連勝しているものの、チームの改革などそう簡単にできるものではないから、そろそろボロが出ていい頃だ。

先にラムズ対パッカーズの結果が入ってきた。案の定、24−6でパッカーズが圧勝し9勝目である。セインツもNFC中部のバッカニアーズとの弱小対決で負けている。

残り試合数も少なくなってきているだけに、地区3位に浮上するのは今しかない。しかし、ヘッドコーチが代わって以来3連勝のベンガルズものっていた。

先制したのはそのベンガルズだった。第1Q、若手QBのブレイクが決めた61ヤード・タッチダウンパスなどで17対0とリードする。

第2Qになってファルコンズも反撃。キックの名手M.アンダーソンがフィールドゴールを決め、続いてエバートがタッチダウンパスを通して10対17と追い上げる。しかし前半終了の20秒前に、ベンガルズもフィールドゴールを決めて3点を返す。前半終わって10対20、ベンガルズのリードでハーフタイムに入った。

10点差なら、勝負はまだまだ見えない。目標を既に失ったチーム同士の意地の張り合いなのか、ここまで両軍共に攻撃が好調だ。どっちのディフェンスが相手オフェンスを先に止めるのか。後半戦に向けてのスタッフの作戦立案能力の見せ所であると同時に、選手がその作戦を自分のものにできるかが勝負の分かれ目だ。

後半、先に得点したのはファルコンズだ。第3Q開始1分半後に、エンドゾーン手前4ヤードからJ.アンダーソンが駆け込んで17対20。しかしベンガルズのブレイクも好調で、ピケンズにタッチダウンパスを通し、再び10点差として勝負は第4Qへ。

残り時間 ファルコンズ ベンガルズ
14:53 エバートからメトカーフに26ヤードタッチダウンパス 24 27
11:00 ベンガルズがエンドゾーン1ヤード前からねじ込む 24 34
9:33 ブレイクからピケンズのホットラインが通り、ベンガルズが突き放す 24 41
6:14 エバートからメトカーフのホットラインでファルコンズが追い上げる 31 41

さらに追撃、というところで、ついにファルコンズが一歩及ばなかった。弱小同士の対決ではあったが、野球のオールスターゲームのホームラン競争みたいなタッチダウン合戦に、4万5戦人の観客も満足であろう(勝ったベンガルズの本拠地だし)。一番満足行かなかったのは神林めぐみであった。

「プロの意地があるのかーっ」

ズブロッカをあおりながら、西村に八つ当たりするめぐみであった。


チーフスの残り試合におけるテーマは、とにかくプレイオフ出場であった。先週の段階でAFC西地区は、

10勝 ブロンコス
8勝 チーフス
6勝 チャージャース

である。ブロンコスが残り試合で2敗する可能性は確実に小さくなってきており、下手をすると残り全勝、よくてもパッカーズ戦に負けるくらいしかなさそうだ。となると、プレイオフに出るにはワイルドカードからしかない。しかし、今日の相手のチャージャースも、プレイオフ出場を賭けて背水の陣だ。

ワイルドカードの枠は3。ブロンコスと、中部地区のスティーラーズが地区優勝の可能性が高いが、東部地区はまだわからない。 ブロンコスとスティーラーズを除くと、チーフス対チャージャースを残した段階で勝ち越しているチームは7チームだ。

勝ち星チーム地区
9勝ビルズ
8勝ペイトリトオッツ
6勝オイラーズ
コルツ
ドルフィンズ

東部地区の優勝争いは、最下位のジェッツを破ったビルズと、ワイルドカードを争うコルツを破ったペイトリオッツにほぼ絞られた。脱落した方がワイルドカード争いに落ちてくる。

チーフスとしては、チャージャースを蹴落とし9勝目をあげれば、ワイルドカードはほぼ確実と言っていいだろう。チャージャースはオイラーズなどとともに6勝で、残るワイルドカードの最後の椅子を争うことになる。しかし、チーフスが負けるようなことがあれば、残り5試合もあれば何が起こるかわからない。

シーズン中の勝率が同率で並んだ場合は、カンファレンス内での対戦成績や地区内での対戦成績などで比較されるため、もし連敗したら即命取りだ。どちらも、これからは1敗もできない状況である。

チーフスの本拠地、アローヘッドスタジアムに詰めかけたファンは、第3Qまで言葉を失ったままだった。チャージャースのオフェンスが炸裂したのである。今季ここまで鉄壁を誇ったチーフスディフェンスが、まるでシュレッダーにかけられたようにズタボロにされ、第3Qまでで350ヤードも攻められ28対0。

第4Qにかろうじてチーフスの二番手QBギャノンがタッチダウンパスを2本返したが、28対14。試合内容はチーフス惨敗である。

「うそだーっ」

水上が頭を抱えて叫んだ頃、

「うそだーっ」

正木は喜色満面で叫んでいた。

チーフスが負けてくれるとは。

ブロンコスは、バイキングス相手にシーソーゲームを制していた。ブロンコスのディビスが、エンドゾーン手前1ヤードから飛び込んで7点先制した後、バイキングスがフィールドゴールとタッチダウンで7対10と逆転。さらにブロンコスが、ディビスが今度はパスキャッチでタッチダウンパスして逆転、前半終わって14対10。

第3Qにバイキングスがタッチダウンを返して14対17。そのまま試合が進んだが、エルウェイのミラクルぶりは健在。試合終了19秒前にマキャフリーへの逆転決勝タッチダウンパスが決まったのだ。

これでブロンコスは、残り4試合を全敗でもプレイオフ出場、1勝でもすれば地区優勝が決まることになったのだ。チーフスが負けてくれたおかげである。

しかも、東部地区トップのビルズと中部地区トップのスティーラーズの来週の成績次第では、ホームフィールドアドバンテージを獲得してプレイオフの試合を全て地元で戦うことができる。少なくともプレイオフ1回戦は免除となる。

来週のブロンコスの試合は、地元マイルハイスタジアムに5勝7敗のシーホークスを迎える。マイルハイスタジアムでの対シーホークス戦は、最近7試合で6勝している。通算ではブロンコスの23勝15敗。侮れないが格下だ。現に今年9月の敵地での対戦でも、ブロンコスが30対20で勝っている。

いよいよブロンコスがスーパーボウルに帰る日が、そしてエルウェイがスーパーボウルリングを手にする日が近づいてきたのか。正木は一人感慨に耽るのであった。

次週(第3週)

ブロンコス
vsシーホークス(ブロンコスのホームゲーム)
チーフス
vsライオンズ(ライオンズのホームゲーム)
ジャイアンツ
vsイーグルス(イーグルスのホームゲーム)
ファルコンズ
vs 49ers(ファルコンズのホームゲーム)

−To be continued.−


注記

スーパーボウルリング

スーパーボウルを制したチームの選手や関係者に贈られる特製の指輪。

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