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熱闘!ブロンコス96(12)


第10週

レギュラーシーズン、第10週。

西村は、例によってインターネットで今日の試合結果を取り出すなり、めぐみの職場にダイヤルした。やっと、ついに、とうとう、待ちに待った、待ちくたびれた、ファルコンズの初白星が出たのだ。

しかも、結成2年目にしてプレイオフに出ようかという絶好調のパンサーズ相手にである。今年のファルコンズが勝利を上げるとすれば、第13週のベンガルズ戦辺りだろうと、西村も水上も正木も思っていたのに。

ともかくこれでファルコンズは、バッカニアーズ、ジェッツと並んで1−8。チーム状態から考えてもここからの大躍進というのは考えにくいが、16試合しかないレギュラーシーズンで、今週負けていれば負け越し一番乗りという悲惨を味わうところだったのだ。

電話がつながった。神林めぐみにつないでもらう。

『はい、神林です』

「めぐみ?俺、西村」

『何だ。どうしたの?』

「ファルコンズが勝ったぜ」

言いながら西村はマウスを操作して、ファルコンズ対パンサーズの試合の詳細を呼び出す。

『え?』

「だから、ファルコンズが勝ったんだよ」

『うそ』

めぐみも、にわかには信じがたいらしい。試合の詳細をかいつまんで説明してやるまで、たっぷり5分はかかった。

ようやく奇跡を受け入れためぐみが電話を切り、西村はやっと、自分が応援するジャイアンツの試合結果を見る気になった。タバコをくわえ、Giants - Cardinalsをクリックする。3勝5敗同士の地区内対決の結果は...

「勝ってるじゃんか」

ジャイアンツがタッチダウン1、フィールドゴール3で16対8とカージナルスを下していた。ジャイアンツはこれで2連勝で、地区最下位を脱した。来週の相手は、今週ファルコンズに負けたパンサーズとの地区内対戦。これで勝てば勝率5割復帰である。

「もしかしたら、けっこう行けるんじゃないか?」

一方水上チーフスは、ミネソタに乗り込んでのバイキングス戦であった。地区優勝するためにはこれ以上ブロンコスから離されるわけにはいかない。そんな意気込みの前には、開幕ダッシュしたバイキングスといえども、司令塔ムーンを欠いて勝つことはできなかった。結果、21対6でチーフスの勝利。負け数の差を1として、マンデーナイトのブロンコスatレイダーズ戦の結果を待つ。

そのブロンコスはここまで、開幕3連勝の後チーフスに負け、やはり今年もここまでかと思った翌週からいつの間にかの4連勝であった。第9週を終わって、2位チーフスに2ゲーム差をつけて7勝1敗。一体、誰がこんなブロンコスを予想しただろう。

しかし、真価が問われるのは第10週、今日のアウェイでのレイダーズ戦であった。今季レイダーズは最悪の出来であるが、問題はブロンコスに苦手意識がないか、である。レイダーズが古巣のオークランドに再移転する前、ロサンゼルス・レイダースであった頃、ブロンコスはとことん、アウェイでは勝てなかった。あのロサンゼルスのメモリアルコロシアムは、ブロンコスにとって正に鬼門であった。が、去年の最終戦であったオークランドでの試合は、わずかにフィールドゴール一本の差でブロンコスの勝利。

アメフトに限らず、勝負の世界で勝ち上がるには、苦手はいない方がいい。絶不調のレイダーズをここで叩いておけば、目の上のたんこぶが一つ取り除ける。「最終戦でレイダーズに負けてプレイオフにいけなかった」「プレイオフに出て1回戦でレイダーズに負けた」などなど、とかく恨みのあるチームである。

余談かもしれないが、スーパーボウルでは過去10年以上、NFC代表が勝利を収めている。最後に勝ったAFCのチームはロサンゼルス・レイダーズであった。この間3度、ブロンコスはスーパーボウルに出場しながらNFCのチームに負けている。「レイダーズに勝ってスーパーボウルに行き、初優勝する」というのは、ブロンコスにとってある意味で究極の命題なのかもしれない。

マンデーナイトゲームは、その週の目玉となる好カードが組まれるが、今週は久々の好ゲームとなった。

ブロンコスの自陣20ヤードからの攻撃で試合が始まったが、最初のプレーでエルウェイはパスを失敗。続くプレーもパスを試みたが、これをレイダーズのリンチがいきなりインターセプト。レイダーズはこれをタッチダウンにつなげ、試合開始3分で0対7と先制した。しかしブロンコスも第1Q終了前に、エルウェイからシャープへのタッチダウンパスが決まって、7対7の同点。

第2Qは、レイダーズが勝ち越しのフィールドゴールを狙ったが失敗。直後にブロンコスがフィールドゴールを決めて10対7と逆転、前半終了前にさらにフィールドゴールを追加して13対7。

第3Qは双方とも決め手を欠き、パントの蹴り合いに終始して無得点。6点差のまま最終第4Qに突入する。

第4Q、自陣34ヤードからのブロンコスの攻撃は、エンドゾーン手前10ヤードまで攻め込むが、レイダーズも踏ん張ってタッチダウンを許さなかった。フィールドゴールに終わって16対7。続くレイダーズの攻撃は、QBホステトラーがテンポよくパスをつないで、7プレーでタッチダウンを返した。これで16対14。さっきのブロンコスの攻撃がタッチダウンだったなら、そこで勝負がついていたかもしれないのだが、これで試合はわからなくなってきた。

次のブロンコスの攻撃は、一度もファーストダウンをとれずパント。このパントが飛距離が出ず、レイダーズはハーフウェイライン手前の自陣46ヤードからの攻撃となった。ホステトラーは最初のプレーでクロケットへ12ヤードのパスを通し、ブロンコス陣内に入る。次のブラウンへのパスは一気に42ヤードを突き進み、わずか2プレーでタッチダウン。試合時間残り5分というところで、レイダーズが16対21と逆転した。

俄然盛り上がる、地元レイダーズファン。今日レイダーズがブロンコスに勝てば、ブロンコス7勝、チーフス6勝、レイダーズがチャージャーズとともに5勝となり、残り7試合でレイダーズにも十分に地区優勝の可能性が出てくるのだ。しかもブロンコスの得点はここまで、最初の第1Qのタッチダウン以外すべてフィールドゴールである。得点差は5点。フィールドゴールでは再逆転できない。

がしかし、ブロンコスのエルウェイも、だてに「ミラクル・エルウェイ」とか「ミスター・カムバック(逆転野郎)」とか呼ばれているわけではない。

自陣27ヤードからのブロンコスの攻撃は、伝家の宝刀・ショットガンフォーメーションであった。W.ムーンのラン&シュートやJ.モンタナのニッケル&ダイムと同様、エルウェイの必殺技である。のってしまうと誰にも止められない。

果たしてエルウェイは、最初のパスは失敗したものの、ミラーへの13ヤードパスとスミスへの11ヤードパスで敵陣に侵入。2回のパス失敗の後、スミスへ49ヤードのロングタッチタウンパスで22対21と逆転したのである。6回のプレーはすべてショットガン、73ヤードを前進するのに要した時間はたったの47秒だった。ブロンコスのベンチが沸き上がる。

タッチダウンの後のエキストラポイントは、キックではなく2点コンバージョンを狙いにいった。逆転したとはいえ、試合時間は4分強も残っている。ここでキックを決めて1点追加しても2点差となり、フィールドゴールで逆転されてしまうのだ。2点を追加すれば3点差となり、フィールドゴールでも同点にしかならない。万一失敗しても、1点差と2点差は意味が同じだ。

がしかし、エルウェイからスミスへのパスは失敗し、点差は1点のままとなった。こうなると今度はレイダーズのベンチが盛り上がる。次のブロンコスの攻撃が、得点が不可能なくらい時間が少なくなるように、残り約4分をぎりぎりまで消費しながら前進してフィールドゴールで逆転すれば、レイダーズの勝利となる。

ブロンコスのイーラムのキックオフを自陣16ヤードでキャッチしたレイダーズのキッドは、これを自陣26ヤードまでリターンした。ここからレイダーズの最後のドライブが始まる。残り時間4分14秒。

まずホステトラーはウィリアムへの17ヤードのパスを成功し、1発でファーストダウンを更新。自陣43ヤードからのプレーはノーハドルオフェンスだった。が、ホッブスへのパスは失敗。2ndダウンもノーハドルで攻撃するが、ブラウンへのパスも失敗。次はハドルを組んで、作戦を確認してからショートバスに出たが、ブラウンはパスキャッチしてから走ることができず、進めたのはわずかに4ヤードだった。

4thダウン、残り6ヤード。自陣47ヤードで残り時間は3分14秒。ここでレイダーズは後半2度目のタイムアウトをとり、作戦を練る。レイダーズの選択肢は二つだ。

4thダウンギャンブルに出る場合、成功すれば逆転勝利の可能性は高くなる。

しかし6ヤードを一発で前進しなくてはならず、失敗すればレイダース陣内のこの地点でブロンコスの攻撃となり、たとえブロンコスの前進をくい止めても、最後にブロンコスがパントを蹴れば自陣深くから攻撃しなければならない。

ギャンブルに出ないでパントを蹴った場合、蹴ったボールがブロンコス陣内深くで止まれば、ブロンコスの攻撃を止めやすいし、パントを蹴られてもフィールド中盤から次の攻撃を再開できる。

レイダーズのオーナー、アル・ディビスが直接指揮を執っていれば、あるいはギャンブルに出たかもしれない。しかしレイダーズのベンチが選んだのはパントだった。ゴーセットの蹴ったボールは、しかし期待されたほど奥へは飛ばず、ブロンコスはこれを自陣35ヤードでフェアキャッチ。レイダーズのディフェンスのがんばり次第という展開になり、タイムアウトで時計を止めたりもしたが、ブロンコスはラン攻撃2回でファーストダウン獲得し、この時点で残り2分。後はエルウェイが、無理に前進することを考えずに時間をたっぷり使っていってゲームオーバー。22対21でブロンコスが宿敵を敵地で倒したのであった。

レイダーズがなぜパス失敗で時計が止まったのにノーハドルで行ったのか(慎重に攻めれば4thダウン6ヤードにならなかったのでは)とか、もし4thダウンでパントを蹴らずにギャンブルしていればとか、結果論ではいろいろ出てくるだろう。しかし勝負に”たら・れば”はないし、仮にそうしていたとしても勝てた保証はない。

残ったのは、8勝目のブロンコスに対し、4勝のレイダーズが地区優勝という可能性はほぼ完全に消えたという結果だけである。

1位

ブロンコス

8勝1敗

(地区内4勝1敗)

2位

チーフス

6勝3敗

(地区内4勝2敗)

3位

チャージャース

5勝4敗

(地区内3勝3敗)

4位

レイダース

4勝5敗

(地区内1勝4敗)

シーホークス

4勝5敗

(地区内1勝4敗)

次週(第11週)

ブロンコス ベアーズ (ブロンコスのホームゲーム)
チーフス パッカーズ (チーフスのホームゲーム)
ジャイアンツ パンサーズ (パンサーズのホームゲーム)
ファルコンズ ラムズ (ラムズのホームゲーム)

−To be continued.−


インターセプト

パスインターセプトやファンブルリカバー(相手の落としたボールを確保すること)といった、攻撃側が予期せぬ場面でボールを守備側に奪われ攻守交代となることをターンオーバーといい、試合の流れを大きく左右する。ましてや、ターンオーバーで得た攻撃権でそのまま得点すると、やられた側は非常にダメージを受ける。

ショットガンフォーメーション

散弾の様にワイドレシーバーがフィールド一杯に散開するフォーメーション。パス攻撃を重視し、一発で長い距離を前進できる。日大フェニックスのかつての黄金期は、このフォーメーションを得意とするハイパーオフェンスが猛威を振るったことによる。

ノーハドルオフェンス

攻撃側が、1プレー終わるごとに組む円陣をハドルといい、ここでQBやベンチからの伝令が次のプレーを指示する。残り時間が少ない場合などは、ハドルを組む時間を省くためにQBからの暗号で次のプレーを指示することがあるが、これをノーハドルオフェンスという。守備側に迎撃体制を整える間を与えないために、残り時間に余裕があってもノーハドルで攻めることもある。

フェアキャッチ

パントやキックオフをレシーブする選手がレシーブ前に手を挙げて、リターンしない意志を表示した場合、その選手にタックルできない。蹴った側のダッシュが早かった時や、絶対に落球の危険を冒せない状況で、よくある。
パントやキックオフは、攻守が離れた距離から全速力で突っ込んでぶつかり合うため、負傷者が出やすいということもあるが、余裕があるときにフェアキャッチすると臆病者とされ、"Kiss your sister."とか、とても書けないようなひどいブーイングが出ることもある。


written 1996
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