熱闘!ブロンコス1996

第11回:第9週


カンザスシティ・チーフス。昨シーズンAFC西地区で地区優勝。今季もチーム創設以来初の開幕4連勝でロケットダッシュし、AFC西地区では1988年以来となる2年連続地区優勝を狙うが、5戦・6戦と連敗。しかし、第7週のバイ・ウィーク(試合なし)を挟んで第8週は木曜日にシーホークスに勝利、さらに中9日という余裕のあるスケジュールで、ブロンコスの本拠地マイルハイスタジアムに乗り込んできた。ブロンコスには第4週にホームゲームで勝っているだけに、今週も勝って巻き返しをはかりたい。

デンバーブロンコス。昨シーズンは8勝8敗。オフェンスラインとディフェンスに課題を抱えて低迷していた。今季も開幕3連勝したものの、第4戦でチーフスに惜敗。しかしその後3連勝し、チーフスが連敗している間に地区首位に立つ。第8週終了時点で、攻撃の獲得ヤード(どれだけ前進したか)の平均は395.7ヤードでAFC15チーム中1位。守備の喪失ヤード(どれだけ前進されたか)の平均も271.7ヤードでAFC1位タイである。

ちなみに第8週までのAFC西地区のスタンディングスは

1位 ブロンコス 6勝1敗 (地区内2勝1敗)
2位 チーフス 5勝2敗 (地区内4勝1敗)
3位 チャージャース 4勝3敗 (地区内3勝1敗)
4位 レイダース 3勝4敗 (地区内0勝2敗)
5位 シーホークス 2勝5敗 (地区内0勝4敗)

一見してばらけているようだが、連敗スタートのレイダースが浮上しつつあり、このレイダースにブロンコスは分が悪いことから、今週の成績次第ではチーフスが地区首位に返り咲く可能性が高くなる。

実際、ブロンコスファン・正木とチーフスファン・水上の頭の中は似たような物だった。水上は、

「とにかく今日ブロンコスに勝って6勝で並ぶ。来週ブロンコスはレイダースに負けるだろうから、チーフスがリードできる。第16週のレイダース対ブロンコスもレイダースが勝つだろうから、チーフスの地区優勝は固い」

と読んでいた。一方正木は、

「レイダース戦の2試合は両方とも勝てないかもしれない。今日負ければチーフスに地区優勝を持って行かれる可能性が大だ」

と見ていた。今季好調を維持していながら、ここ数年の成績不振から、連勝も「三振前のバカ当たり」に思えてしまう。弱気である。

いずれにせよ、「今日は勝たなければ」という点は同じであった。「勝ち星一つの重さは同じでも、シーズン中一度や二度は絶対に落とせない試合というものがある」と言ったのは野村監督だったか星野監督だったか。シーズンも後半にさしかかり、AFC西地区の行方を占うには重要な一戦である。

さて、試合の方は...

チーフスの攻撃は自陣14ヤードからであったが、ラン攻撃がふるわず自陣34ヤードでパントに終わった。続くブロンコスの攻撃は、2プレー目にエルウェイ→シャープの46ヤードタッチダウンパスが決まり、7−0とブロンコスの先制。次のチーフスの攻撃は10ヤードも進まないうちにパントになったが、ブロンコスのスミスがこれをチーフス陣内34ヤードまでリターンするビッグプレー。最後はチーフス陣内22ヤードからイーラムがFGを決めた。

これで10−0としたブロンコスだが、キックオフしたボールをチーフスのヴァヌーヴァが自陣3ヤードでキャッチし、ブロンコスのスペシャルチームをかき分けて、そのまま97ヤードのキックオフリターンタッチダウン。あっと言う間に10−7と追い上げる。が、ブロンコスもミラーへの31ヤードパスなどで3分と経たない内にTDを追加し、17−7と引き離す。ここまで試合開始から約12分、第1Qも終わらないうちの攻防である。

第2Qはブロンコスがさらに7点追加。チーフスは、QBのボウノが相手ディフェンスに阻まれてパスを失敗する場面が多く無得点。前半を終わって、得点はブロンコス24−7チーフス。このままブロンコスが第4週の借りを返せるのか。

第3Qもブロンコスはエルウェイのパスを中心に攻めたが、反則による罰退が増えてきた。が、チーフスもブロンコスのディフェンスにきっちり止められて思うように前進できない。戦前のおおかたの予想では「ブロンコスのオフェンス対チーフスのディフェンス」と見られていたが、予想外のブロンコスディフェンスの踏ん張りである。後半、エルウェイからミラーへの41ヤードのパスなどで前進したブロンコスが、第3Q終了間際にTDを追加して31−7とリードを広げた。

第4QにはイーラムがFGを追加し、終わって見ればチーフスはキックオフリターンTDの7点だけで34−7とブロンコスの圧勝に終わったのである。

この試合のスタッツは、オフェンスの獲得ヤードがブロンコス499、チーフス232。タイムポゼッションがブロンコス34:01、チーフス25:59。ブロンコスがチーフスを完全に圧倒した試合であった。

試合後、エルウェイはオフェンスラインに感謝して言った。

”奴らは本当にいい仕事をしてくれたよ。チーフスみたいなチームを相手にするのは、決して簡単じゃないんだ。でも奴らががんばってくれたから、俺たちはいいフィールドポジションから攻撃し続けることが出来たんだ”

何はともあれ、2位チーフスに直接対決で勝った意義は大きい。茫然自失の水上の顔が浮かぶ思いで、正木は職場のパソコンをインタネットから切断した。この結果AFC西地区は、

1位 ブロンコス 7勝1敗 (地区内3勝1敗)
2位 チーフス 5勝3敗 (地区内4勝2敗)
3位 チャージャース 4勝4敗 (地区内3勝1敗)
レイダース 4勝4敗 (地区内0勝2敗)
5位 シーホークス 3勝5敗 (地区内0勝4敗)

レイダース戦を2試合残しているブロンコスとしては、地区内で星二つリードできたのは大きい。何よりオフェンスラインとディフェンスが安定している。もし万一、来週アウェイでレイダースに勝ってしまったら。

「正木さぁん、そろそろスーパーボウルのチケット押さえた方がいいんじゃないすかぁ」

「だな」

昼休みの終わりのチャイムがとっくに鳴ったのに、正木は藤代と画面を覗いていた。


そのころ西村は、思いっきりブルーが入っていた。日本シリーズ、読売ジャイアンツがオリックスに1勝4敗で破れたのだ。

加えて、水上からの電話が追い打ちをかけた。

「11.5ゲーム差をひっくり返して奇跡のリーグ優勝をした上で、日本シリーズで完敗。盛り上げておいて落とすなんて、これ以上のメークドラマはないよね」

ジャイアンツ(ニューヨークの)がライオンズ(デトロイトの)相手に、久々のスカッとする勝ち方をしたものの、やはり彼にとっては本命は読売ジャイアンツなのだ。

めぐみが気長に応援することにしたファルコンズは、名門スティーラーズ相手にシーソーゲームの末、ゲーム終了6分前に同点に追いついたが、最終的に17−20と惜しいところで初白星をまたも逃した。全30チーム中、勝ちがないのはファルコンズだけである。最近ゲームに出てこないと思っていたQBのJ.ジョージは、レイダースかシーホークスとトレードという話になっていたらしい。トレード要員と噂されているレイダースのQBホステトラーや、シーホークスのQBマイヤーが相当にくさっているという話だ。

次週(第10週)

ブロンコス
vsレイダース(レイダースのホームゲーム)
チーフス
vsバイキングス(バイキングスのホームゲーム)
ジャイアンツ
vsカージナルス(ジャイアンツのホームゲーム)
ファルコンズ
vsパンサーズ(パンサーズのホームゲーム)

−To be continued.−


注記

22ヤードからFGを決めて

ゴールポストはエンドゾーンの10ヤード奥に立っており、FGの場合キッカーはスクリメージ(ボールがセットされた位置)から7〜8ヤード下がったところから蹴るため、実際にボールをとばさなければならない距離はこの場合約40ヤードになる。

反則による罰退

守備側が反則したら攻撃側がボールを前進、逆なら後退する。何ヤード前進・後退するかは、反則の種類や度合いによって決定される。

ただし、反則したら必ず罰退というわけではない。反則された側が、反則をとるか放棄(ディクライン)するかを選択できる。たとえば、守備が5ヤード罰退の反則をしている間に攻撃が10ヤード前進していたとすれば、攻撃側は反則を放棄したほうが得ということだ。

タイムポゼッション(TIME OF POSSESSION)

試合時間1時間の内、それぞれのチームのオフェンスがボールを確保していた時間。ボールを支配する時間が長い方が、相手の攻撃機会を少なく押さえたことになり、どちらが優勢だったか示す目安になる。(あくまでも目安)

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