イラクで日本人人質殺害

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事件のあらまし

イラクで武装勢力の人質となっていた24歳の邦人青年が、日本時間の2004年10月31日未明、斬殺死体となって発見されました。

犯人グループはアルカイダのザルカウィ幹部率いる「イラクの聖戦アルカイダ組織」を名乗っていましたが、ザルカウィ幹部のグループの関与が疑われている外国人人質事件では4月以来14件で、うち10件で16人が殺されているといいます。

当サイト管理人は、もとよりすべての「暴力により主張を通そうとする行為」に反対です。今回の事件の犠牲者については、行動があまりにも軽率であったという報道から、まるで「殺されても仕方ない」というかのような自己責任論を主張する人々がいるようですが、たとえ本人の軽率さを認めるとしても、殺されても仕方ない人間などはいないと思います。
確かに、自分の意思で行動を決定できるすべての人間には、自分の行動にともなう自己責任がともないます。しかしそれとは別に、国には国民の安全を確保する責任があるはずです。軽率な若者の軽率な行動のために税金を1円でも使ってほしくないというような声には同意できません。もしすべてが自己責任で片付けられるなら、ヨーロッパを旅行中に「よど号事件」の犯人に誘われて北朝鮮に渡ったと言われる拉致被害者も自己責任だというのでしょうか。

一方、今回の事件を、自分たちの主張を通すために利用しようとしているかのような人たちもいるようです。当サイト管理人はそれにも同意できません。
当サイト管理人は犠牲者を悼み、事件に心を痛める者です。子を持つ親としても、ご遺族の心中は察することさえできません。そして、というかだからこそ、どのような思想に基づこうともこの事件を利用する人には賛成できません。

日本キリスト教協議会による緊急申し入れ書

以下は、日本キリスト教協議会(以下、NCC)が、2004年10月27日付けで出した「緊急申し入れ書」の全文です。
前述の通り当サイト管理人は、今回の事件を利用しようとする人たちには同意できませんが、キリストの名を使い聖書の言葉を使ってそのようにする人たちにはなおさら賛成できません。

なお、以下の文書は10月27日時点、つまり犠牲者がまだ生きているという希望が持てた時期のものですが、当ページは被害者が犠牲者となった今では書くべきか迷うところもあるものの、あくまでも10月27日時点の申し入れ書に対する反論として読んでください。

2004年10月27日

総理大臣 小泉純一郎 様
外務大臣 町田信孝  様

緊急申し入れ書

 10月27日の報道によれば、イスラム過激派組織「イラクの聖戦アルカイダ組織」を名乗る武装組織により、24歳の日本人男性が拉致されたとのことです。この武装組織は、自衛隊がイラクから撤退しなければ、48時間以内に男性を処刑するとの声明を出しています。

 この男性は、家族により、福岡県直方市の香田証生さんであることが確認されています。拉致された日本人の救出が第一優先されるべきです。青年の即時無事解放のため、速やかに自衛隊のサマワからのを撤退を(原文ママ)宣言してください。

 大量破壊兵器が存在しないことがすでに明らかになり、米国のイラクに対する戦争の大義は、すでに失われています。イラクで多数の民衆を殺害した米国に協力する形で自衛隊をサマワに派遣したことが、それまでイラク現地で地道な国際協力を続けてきた日本の民間NGOの活動を妨げています。イラクが、未だ戦争の只中にあるにもかかわらず、本来戦闘地域に派遣できないはずの自衛隊を派遣し、駐屯させていることが、そもそもの間違いです。
 自衛隊派遣以前は、日本人に対して友好的だったイラクの人々が、自衛隊派遣以降、期待を裏切られる形で、日本人に対しても敵意を持つに至っています。
 この責任は、米国の戦争に積極的に荷担し、自衛隊を派遣してきた日本政府にあります。今回の日本人拉致人質事件について、小泉首相は、即座に、「自衛隊の撤退はしない」と言明されたとのことですが、それがどれほど日本の市民の安全を無視し、家族の不安と願いを切り捨てる非人道的な言動か、人間として考えていただきたいのです。

 イラクで拉致された香田証正さんは、日本キリスト教団直方教会の会員の家族であると聞いています。平和を祈り、世界の人々との友好的な出会いを求めて旅をしていた青年の一人が、このような形で拉致されたことは慙愧に耐えません。日本政府は、直ちに、香田証生さんの解放のためのあらゆる手段をとってください。

 私たちは日本の33のキリスト教会、教派、教団、団体のネットワークである協議会として、この会につながるすべてのキリスト者の願いと祈りをつなげ、今、日本政府に対して切に要請します。自衛隊をサマワから、即時撤退させてください。

「これらのもっとも小さい者が一人でも滅びることは、あなた方の天の父の御心ではない。」
(マタイによる福音書18章14節)

日本キリスト教協議会
総幹事 山本俊正
平和・核問題委員会委員長
小笠原公子

何が問題なのか

上記文章を見て、自衛隊派遣に反対する人、とりわけクリスチャンである派遣反対派は、どこが問題なのか、どこが事件を利用しようとしているのかと疑問を持たれるかもしれませんので、ひとつずつ考えて行きます。

自衛隊派遣の目的を曲解している

以前にも米国のイラク侵略と日本政府の侵略支援に反対しますのページで書いたとおり、「米国のイラクに対する戦争の大義」などというものは「大量破壊兵器が存在しないことがすでに明らかにな」る以前から存在しません。
しかし自衛隊のイラク派遣についてのページで書いたとおり、日本は「米国に協力する形で自衛隊をサマワに派遣した」のではありません。小泉首相がブッシュ大統領と裏でどんな約束をしたかは知りませんが、自衛隊派遣の根拠であるいわゆる「イラク特措法」では、自衛隊派遣を米軍支援のためではなく人道支援のためとしています。第一条からその目的を引用します。

イラクにおいて行われている国民生活の安定と向上、民主的な手段による統治組織の設立等に向けたイラクの国民による自主的な努力を支援し、及び促進しようとする国際社会の取組に関し、我が国がこれに主体的かつ積極的に寄与するため、…

実際にも、アフガニスタンへの派遣の際と違って、イラクの自衛隊は米軍への供与は行っていないはずです。幸か不幸か、目の前でテロにあった米軍を助けるために発砲というような事態にも至っていません。いかなるかたちででも、イラクでは自衛隊は米軍に協力していません。
(2007年4月30日追記:このページでは、イラクに派遣された陸上自衛隊について書いています。航空自衛隊は、米軍に限らず多方面への支援を行っています。しかし航空自衛隊も幸いにして発砲等のイラク人への加害行為・イラクへの侵略行為に加担しないで済んでいる状況です))

確かに小泉政権は、ブッシュ米政権に押されて自衛隊を派遣したように見うけられます。政治的には、自衛隊がイラクに派遣されること自体が米国の政策を支援するものと言えます。しかしイラク特措法によって、日本は「米国に協力できない形で自衛隊をサマワに派遣した」のです。

以上の法律上、あるいは事実関係について、上記申し入れ書はまるきり無視し、ただ自衛隊が派遣されている状態を自分たちの主張にそって曲解しているのみです。
(こういった曲解は日本キリスト教界には前例があります。神道側の学者でさえ天皇を神としていないにもかかわらず「天皇を神とする天皇制は信教の自由を犯す」と主張してきたことなどです)

戦闘地域への派遣

「イラクが、未だ戦争の只中にあるにもかかわらず、本来戦闘地域に派遣できないはずの自衛隊を派遣し、駐屯させていることが、そもそもの間違いです」という主張も正確ではありません。

まず、イラクは「戦争の只中」ではありません。フセイン政権下のイラクと米国との戦争は、米国側の宣言によって収束しています。
イラクが「戦争の只中」であるというのは、イラク軍と外国軍が戦っているということを意味します。もし上記申し入れ書が、現在のイラク暫定政府を認めず旧フセイン政権を正当な政府と考え、さらに武装テロ組織はイラクの正当な国軍であると考えるなら、武装テロ組織と外国軍(自衛隊を含む)の戦いは戦争であると言えます。
それなら、現状に対するNCCの認識が当サイト管理人とは異なるというだけです。おそらく世界の大多数とも異なるだろうと思います。

また「戦闘地域以外への派遣なら問題ないが、現地は戦争中だから問題だ」という状況分析は、自衛隊の派遣自体が問題だという主張と一貫性がありません。
それともNCCは、戦闘地域以外への自衛隊派遣を容認することにした上で、サマワが戦闘地域だから問題だというのでしょうか。
今回の事件が起きたのは自衛隊が派遣されているサマワではありませんから、「邦人青年が拉致されるような危険な地域に自衛隊が派遣されている」というわけでもありません。

つまりこの一文は、一見正しそうにみえて、「本題とは無関係あるいは矛盾する事実を、主張を補強するためにこじつけている」というものなのです。

確かにイラク特措法第二条2では、戦闘行為が行われておらず、活動中も戦闘行為が行われることがないと認められる地域でのみ自衛隊が活動できるとしています。
しかしサマワは、現在のところ戦闘行為とは関係していません。これは条文を作った誰かがうまい(あるいは狡猾という意味で)というべきですが、同項では戦闘行為を「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう」と定義しているからです。国際的な武力紛争ということは、イラク国軍と外国軍が紛争状態に入って始めて「戦闘行為」になるということです。

アルカイダが国際的テロリストだと言っても、アルカイダの武装テロは規模が大きくてもただの犯罪です。イラク国内の武装した犯罪者が外国軍(自衛隊も含む)を攻撃したとしても、それは「国際的な武力紛争」とは言えません。
たとえば仮に日本の暴力団が米国内で米軍や警察相手に銃撃戦をはじめても、それを「国際的な武力紛争」とは呼ばないでしょう。同じ理由でアルカイダと自衛隊が撃ち合いになったとしても、それは国際的な紛争ではないのです。
派遣地域が平和ならという国会答弁はあったか確認していませんが、少なくとも条文にはないのです。だからおそらく、サマワで武装勢力が自衛隊を攻撃した場合、日本政府は「これは『国際的な武力紛争』ではない」と言うのではないかと思います。

しかしこの条項が問題だと思うなら、同法の改正を求めるべきでしょう。あるいは、法的なことはよくわかりませんが、危険地域への自衛隊派遣をイラク特措法違反として司法に告発する方法もあるかと思います。いずれにせよ、「問題だ問題だ」というだけで何ら法的手段をとらず、大声を出せば主張を通せるという考えは、法治国家に対する暴力です。

自衛隊派遣のせいでイラクの人々が日本に敵意、というのはウソ。

「自衛隊派遣以前は、日本人に対して友好的であったイラクの人々が、自衛隊派遣以降、期待を裏切られる形で、日本人に対して敵意を持つに至っています」とのことですが、どのようなニュースソースからこの見解を得たのでしょうか。どのようなアンケートや世論調査によって、自衛隊派遣前と後とでイラクの国民感情がどのように変化したという分析をしたのでしょうか。

マスメディアが報道することが事態のすべてであるとはまったく考えませんが、報道されているところはむしろ逆です。
確かにサマワの人たちが、自衛隊派遣以降、期待を裏切られたと言っている声が報道されています。ただしそれは「日本の自衛隊は宿営地に閉じこもったままだ。もっと活動してほしいのに」という期待です。

また、邦人青年が殺害されたあとの10月31日付けで、毎日新聞は以下のように伝えています。

 【カイロ小倉孝保】香田証生さん(24)が殺害された事件で、自衛隊が駐留するイラク南部サマワの各団体は31日、駐留自衛隊に哀悼の意を表する手紙を送った。

 サマワの毎日新聞助手によると、市民の大多数は香田さんの死を悲しみ、「犯人たちはイスラム教徒ではない」と厳しく批判している。

 また、サマワ・イラク日本友好協会のアルマール代表▽サマワ女性自由の会のブドゥール代表▽サマワ自由運動のサーディク代表--など非政府組織(NGO)関係者やムサンナ県健康センターのバクル医師などが同日、自衛隊基地に哀悼の手紙を送った。

毎日新聞 2004年10月31日 21時58分

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さらに、以下はこのページを読んでくださった方から寄せられた情報です。(2004年11月16日追記)

防衛庁・自衛隊サイト内の、イラクでの活動に関するページ
Yahoo!のニュース。サマワ市民140人による、自衛隊駐留継続を訴えるデモ(「自衛隊駐留反対を訴えるデモ」ではない)
メディアによる、自衛隊に関する捏造報道についてのサイト

繰り返しますが、当サイト管理人は、マスメディアの報じることだけが事実だとは思いません。しかしこれらの報道からは、少なくとも自衛隊派遣によってすべてのイラク国民の対日感情が悪化したとは考えられません。報道による限りでは、自派の主張を暴力で通そうとする勢力が、国内を不安定にするために事件を起こしつづけ、反米感情を誘導しようとして親米国に矛先を向けているとしか見えません。
上記申し入れ書がいう「イラクの人々」は、そのような勢力に賛同しているのでしょうか。上記記事の市民たちは、上記申し入れ書が念頭に置いている「イラクの人々」に含まれていないのでしょうか。いったい誰が「イラクの人々」で、誰がそうではないというのでしょうか。NCCは、武装テロ組織だけを「イラクの人々」と考えているようです。

テロリストの主張に従うことが、日本の市民の安全を考えること?

上記申し入れ書は、小泉首相が「自衛隊の撤退はしない」と言明したことが「どれほど日本の市民の安全を無視」しているかと主張しています。

仮に、武装集団が「自衛隊が米軍を攻撃しなければ人質を殺す」と言ったら、自衛隊が米軍を攻撃することが「日本の市民の安全」を優先することなのでしょうか。
仮に、コロンビアの麻薬組織が「日本が麻薬を解禁しなげれば人質を殺す」と言ったら、麻薬を解禁することが「日本の市民の安全」を優先することなのでしょうか。
仮に、全米ライフル協会が「銃刀法を改正して誰でも銃を持てるようにし、米国から銃を輸入しなければ、人質を殺す」と言ったら、銃を解禁することが「日本の市民の安全」を優先することなのでしょうか。
仮に、中国が「沖縄は中国固有の領土である。引き渡さなければ人質を殺す」と言ったら、沖縄をプレゼントすることが「日本の市民の安全」を守ることなのでしょうか。
仮に、銀行強盗が「警察は引き上げ、海外逃亡の手段を提供しろ、でなければ人質を殺す」と言ったら、いってらっしゃいませと飛行機に乗せてやることが「日本の市民の安全」を守ることなのでしょうか。
(念のためですが、すべて「仮に」であって、コロンビア、米国、中国、また沖縄の人々に対して他意はありません)

繰り返しますが当サイト管理人は、すべての「暴力により主張を通そうとする行為」に反対します。そんなことをすれば模倣事件が多発するようになり、かえって「日本の市民の安全」がおびやかされると考えます。

キリスト者の家族だから?

ご遺族の痛みは察することさえできません。ましてキリスト者であるご遺族にとっては、家族がいつかキリストを受け入れて信仰を表明する時が来るようにと祈っていたのに、その日が来る前に凶刃によって地上での生を絶たれたことは、それこそ慙愧に耐えないことと思います。

ですが、拉致された被害者がどのような意図・目的で現地に入ったのかは、わかっていません。少なくとも、本人はキリストへの信仰を表明したクリスチャンではなかったようです。しかし上記申し入れ書は、本人の家族がキリスト者であったことを根拠として、だから本人も「平和を祈り、世界の人々との友好的な出会いを求めて旅をしていた」のだという文章にしています。

聖書には、キリストを信じれば「家族も救われます」と約束されてはいますが、キリストを信じれば「家族も救われています」とは書いていません。なのに上記申し入れ書は、キリスト者の家族はすでにキリスト者であるかのように書いているのです。
これは反聖書的なのではないでしょうか。まるで「家が○○宗なのだから、本人がキリスト教と言おうと何と言おうと、お前は○○宗なのだ」というのと同じ論理ではないでしょうか。少なくとも上記申し入れ書は、家族がキリストを信じるようにと祈っているすべてのキリスト者たち(被害者のご遺族を含めて)のその祈りを無にしていると感じます。

そういうつもりではないというにしても、被害者の家族がキリスト者でなかったら拉致されても慙愧に耐えなくはないというつもりなのでしょうか。

聖書の引用が間違っている

上記申し入れ書は最後にマタイ福音書を引用しています。しかし自衛隊のイラク派遣についてのページでも書きましたが、イラクの国民を見捨てることも「あなた方の天の父の御心ではない」のではないでしょうか。

イラクの市民は、「これらのもっとも小さい者」ではないのでしょうか。
イラクの市民は、日本人キリスト者の「隣り人」ではないのでしょうか。

武装組織の不当な要求に従うことが、平和を作り出すことなのですか。
武装組織の不当な要求に従うことが、平和を求めてこれを追うことなのですか。

テロリストが暴力を手に求めることをかなえるのが、正義を胸当てとして着けている者の祈りなのですか。
テロリストが暴力を使って主張することを聞くのが、正義を曲げてはならないと命じられている者の祈りなのですか。

「敵を愛し」の愛とは、相手に罪を重ねさせてあげることを言うのですか。
「迫害する者のために祈れ」とは、迫害する者が望みどおりに迫害できるよう祈ることなのですか。

すべてのキリスト者の祈り?

「日本の33のキリスト教会、教派、教団、団体」につながるすべてのキリスト者とは、いくらキリスト教徒の少ない日本とはいえ相当の数でしょう。

(当サイト管理人が所属する教会とその属する教団だけでも、これだけの問題についてとても一日のうちに「すべて」の総意などまとまらないと思います。NCCの規模で、「10月27日の報道」によるアクションを当日中に申し入れられるとは、よほど統率されているのでしょう。
しかしこの点は恐いのでこれ以上考えません。このページに書いたようなことに疑問を持つ人が一人でもいたとしたら、そうした個人を組織の主張で塗りつぶせる団体ということですから。逆に、聖書から自分の主張に都合のいい言葉だけを都合のいいように引用しているのに、全員が疑問も持たずに「左へならえ」しているなら、もっと恐い。)

それはそれとして、「この会につながるすべてのキリスト者の願いと祈りをつなげ、今、日本政府に対して切に要請します。」というその要請とは、「直ちに、香田証生さんの解放のためのあらゆる手段をとってください。 」ではなく「自衛隊をサマワから、即時撤退させてください。 」なのです。事件の解決ではなく犯人の要求を飲むことが、この会につながるすべてのキリスト者の祈りなのです。「この会につながるすべてのキリスト者」が願い、祈っていることは、自衛隊撤退という自分たちの主張が実現することであって、被害者が無事解放されることではないのです。

この事件を、自衛隊を撤退させるべきという主張のために利用しようとしている、としか見えないのですが、これはそれほど穿った見方でしょうか。100歩ゆずっても、事件に便乗しているようにしか見えません。
キリストの名を使い聖書の言葉を使ってまで事件を利用しようにする人たちには同意できません。

日本政府と日本国民、またサマワ市民とイラク国民に誤解してほしくないのですが、上記申入書は「この会につながるすべてのキリスト者」だけの考えであって、「日本のすべてのキリスト者」の考えではありません。少なくとも私は違います。

祈り

日本の市民の安全を無視して自衛隊をサマワから即時撤退させることは、少なくとも当サイト管理人の祈りではありません。被害者の安全と天秤にかけるのではなく、被害者の命も日本市民の安全も大事なのです。

だから、香田証生さんの解放のために(日本の市民の安全を無視しない)すべての手段を取るように求めることは、当サイト管理人の祈りです。おそらくは「日本の33の…」に限らずすべてのキリスト者の祈りでしょうし、キリスト者かどうかを問わずすべての日本人と日本政府の願いでしょう。そしておそらくは、イスラム教徒を含めたサマワ市民、イラク国民、アラブ圏の人々の祈りともなりえると思います。

結果として非常に残念なことになりました。残念ですませることができないほど残念です。しかし日本政府は(「武装集団の要求に従って自衛隊を撤退させることで日本の市民の安全を無視する」ということ以外の)可能な限りあらゆる手段を取ってくれたことと思いたい。
当サイト管理人は、小泉首相の就任当初から現政権不支持であり、擁護する気は毛頭ありません。けれど、4月以来10件16人の人質殺害を行ってきた武装勢力を相手に、現地の捜査権もない日本政府ができることは最初から限られていたというのも事実でしょう。それともNCCとそれに関係するクリスチャンは、上記申し入れの「あらゆる手段をとってください」というなかに、「日本がイラクの司法を無視してイラク国内を捜査するべき」ということを含めていたのでしょうか。

イラクの司法の手でこのような事件の再発が防止できるように、またそれが可能なほどの安定が早期にイラクに実現するように祈ります。そのために日本がイラクの隣人として(日本の憲法と法律の範囲で)できる限りのことをできるようにと願います。
そして、無法な武装勢力の要求によってではなく、派遣の必要がなくなって自衛隊が撤退する日が一日も早いように祈ります。

作成:2004年11月1日
更新:2007年4月30日

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