そのとき、何があったのか

祭りの3日前 火曜日 夕方


エルサレム陥落の予告

日曜日以来イエス一行は、昼間はエルサレムの宮ですごし、夕方になるとベタニア村に出て行って一泊しています。マルコ13章でイエスが神殿を出て行くところから記録されているのも、たぶん夕方が近づいていたときなのでしょう。
そのとき弟子の一人が宮の建物を見上げてイエスに[先生、御覧ください。なんとすばらしい石、なんとすばらしい建物でしょう]と言ったと記録されています。

現在のエルサレムの城壁はエルサレムストーンと呼ばれる独特の石でできています。白っぽいこの石は、陽が当たると黄金色に見えるのです。筆者もイスラエルに行ったおりに見ましたが、とても美しいものでした。(*1)
イエスの時代の神殿は、ヘロデ大王(*2)が着工して以来46年経ってもまだ完成していなかっといいますから、よほどの規模で手の込んだものだったのでしょう。今と同じくエルサレムストーンだったかはわかりませんが、弟子たちが驚嘆するのも無理はないところです。

ところがイエスは弟子にこう答えたのです。[これらの大きな建物を見ているのか。一つの石もここで崩されずに他の石の上に残ることはない。]

これはエルサレムが崩壊するという予言なのか?不安を感じたペトロたちは、イエスがオリーブ山で宮のほうを見つめているときに、辺りをはばかりつつ「いつそんなことが起きるのか、その時にはどんな前兆があるのか」と尋ねました。そこでイエスは話し始めたのです。それはエルサレム崩壊のみならず、世の終わりについての予言でした。


終末の予兆

その時には、イエスの名を名乗る者が大勢あらわれて、多くの人をまどわす。戦争が起こり、民族は民族に、国は国に敵対する。あちこちで地震がおこり、飢饉が起こる。
しかしまだこれは序の口である。

クリスチャンたちが迫害を受け、信仰のゆえに司法に引き渡されたり、刑を受けたり、権力者の前で証言させられたりする。しかしこれは、福音があらゆる民につたえられるためで、そのとき何を話せばよいかは神自身が教えるから心配いらない。

兄弟は兄弟を、父は子を、子は親を、死に追いやったり殺したりする。クリスチャンはクリスチャンであるというだけですべての人に憎まれる。

そして「憎むべき破壊者」が「立ってはならない所」に立つ。

「立ってはならない所」とは神殿の聖所と考えられますが、この「憎むべき破壊者」とは誰なのでしょうか。わかりません。ただ、イエスの言葉を記録している途中でマルコが「−読者は悟れ−」と書きこんでいることからも、これが非常に重要な点だと想像されます。
とにかくその時には逃げろ、とイエスは続けています。その日には妊婦などは不幸だ、その日が冬にならないように祈れ、とまで言っています。[神が天地を造られた創造の初めから今までなく、今後も決してないほどの苦難が来るからである]というのです。

また、その時にはニセキリストやニセ預言者が現れるが、信じるな、とイエスは警告しています。

そして天変地異ののち、[人の子【キリスト】が大いなる力と栄光を帯びて雲に乗って来るのを、人々は見る]とイエスは予告しました。

整理すると、終末の時には「予兆→大艱難→天変地異→キリストの再臨」があるというのです。ではそれは、いつ起こるのでしょうか。


目を覚ましていなさい

その日、その時は、誰も知らない。天使たちも、神キリストも知らない。ただ神ヤハウェだけが知っている、とイエスは言います。ということは「聖書を解読したらわかった」「神の啓示を受けた」「私はキリストである。この日に終末が来る」などと言って「○年○月○日にこの世の終わりが来る」などという人は、すべてインチキということですね。
イエスはただ「それがいつなのかはわからないから、気をつけて、目を覚ましていなさい」と言っているのみです。

いつ泥棒が来るかわかっていれば、目を覚ましているでしょう。では「いつ泥棒が来るかわからないけれど、来るのは確か」だとしたら?
といっても、不眠不休でいなさいというわけではありません。心が起きているようにしなさい、ということなのです。

ここまで読んで、何か思いませんか?
20世紀の終わりあたりから、戦争は「国対国」から「民族対民族」になりつつあると言われています。
南北問題の拡大で、飢餓に苦しむ人は減りません。
子が親を殺したり、親が子を殺したりという事件が、珍しいものではなくなってきたようです。
そして新宗教が濫立する中、キリストの再来を名乗るものもあります。

イエスが約2000年前に予告した予兆が、次々と実現しているように見えるのは、気のせいでしょうか、偶然でしょうか。

※ 終末に関しては、解釈が非常に難しいです。今回はかなり省略してもいます。聖書をお持ちの方は、一度自分でお読みになってください。このページで扱ったのはマルコ福音書13章です。


*1 聞くところによると、エルサレムでは条例で、外壁にはエルサレムストーンを使うこととされているそうです。

*2 ローマの後ろ盾で前37年〜前4年までエルサレムを統治した。独裁者だがすぐれた政治家でもあった。

前へ 次へ