そのとき、何があったのか

祭りの3日前 火曜日 昼間


ユダヤ指導者たちとの戦い

祭司長、戒律の専門家である律法学者、厳格なファリサイ派、民の長老たちなど、ユダヤ指導者層はなんとかしてイエスを失脚させようと、衆目の前でイエスに論戦をしかけました。もしイエスが、旧約聖書に反するようなことを言えば、「こいつは神につかわされた者などではない」ということができます。もしイエスが、イスラエル人が期待しているとおり「イスラエルの政治的軍事的な王」として答えれば、ローマへの反逆者として告発すればいいのです。

一方、イエスにも事情がありました。イエスがエルサレムに入ったとき、民衆はイエスを王として迎えましたが、もし民衆がイエスをかついで革命運動や独立闘争をはじめたりすると、イエスとしては困るのです。
民衆に守られているほうが安全かもしれません。しかしイエスがキリストである以上、すべての人の罪をあがなう生け贄として、イエスは殺されなければならないのです。

さて指導者たちは、普段は反目しているグループが手を組んでまで、繰り返しいくつものテーマでイエスに攻撃をしかけました。しかしことごとくイエスに撃退されます。
そんな中、これはイエスも絶体絶命という絶妙な一手を打ったのがこの質問でした。

先生、わたしたちは、あなたが真実な方で、真理にもとづいて神の道を教え、だれをもはばからない方であることを知っています。人々を分け隔てなさらないからです。ところで、どうお思いでしょうか、お教えください。皇帝に税金を納めるのは、律法にかなっているでしょうか、かなっていないでしょうか

もしイエスが「税を納めろ」と答えれば、イスラエルはカイザルの民であるということですから、イスラエルはヤハウェの民であるという聖書に違反します。それ以前に民衆がイエスを離れるでしょう。
一方、税を納めるなと答えれば、彼らはイエスを反逆者としてローマに告発すればよいのです。
イエスがどう答えても思うツボ。よくもこんなうまい手を考えたものです。彼ら自身「これで勝った」と思ったのは間違いありません。

ところがイエスは、税金に納める金を見せなさいと言い、彼らが銀貨を持ってくると、それに刻まれているのは誰の肖像と銘か、と言ったのです。ローマの支配下にあるイスラエルでは、ローマの貨幣が流通していて、納税するのも当然ローマの貨幣です。彼らは「皇帝のものです」と答えました。
するとイエスはこう言ったのです。「では、皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい」

「やられたっ!」という彼らの顔が見えるようです。
このほかにも指導者たちはイエスに攻撃をしかけましたが、ついには[もはや、あえて質問する者はなかった]と記録されている結果になったのでした。

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