ヨシュア記 第1回

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ヨシュア記の基礎知識

「律法の書」と呼ばれる5巻が終わって、旧約聖書の第6巻ヨシュア記から聖書は「歴史書」と呼ばれる、読み物としてとてもおもしろい部分に入っていきます。

毎回恒例の基礎知識編ですが、ヨシュア記については今回と次回の2回にわけてお送りします。今回は恒例の「書名、聖書中の位置付け、著者、構成」などついて紹介しますが、ヨシュア記を理解する上で壁になると思われる点について最初に扱っておいたほうがよいかと思い、次号までを基礎知識編とするものです。
ヨシュア記はイスラエルが「約束の地」を手に入れる記録です。それはつまり、神の名のもとに戦争を重ねた記録でもあり、初めて読む方はたびたび「なぜここまでするのか」という疑問にぶつかるだろうと思うのです。

タイトルと位置付け

キリスト教の旧約聖書とユダヤ教のヘブライ語聖書では、書名がことなるものが多くありますが、旧約聖書の「ヨシュア記」、はヘブライ語聖書でも「ヨシュア」(より原音に近いカナ表記を試みるなら「イェホシュア」)です。

旧約聖書とヘブライ語聖書では目次の順番も異なっていますが、ヨシュア記が「モーセ五書」に続く第6巻に置かれているのは同じです。ただし旧約聖書ではヨシュア記を「歴史書」として分類していますが、ヘブライ語聖書ではヨシュア記この巻を「預言者」としています。

ヨシュア記はモーセ5書に対して、その続編、後日談、完結編とでも呼ぶべき内容になっています。モーセ5書では、ヤハウェがアブラハムにカナン(パレスティナ)を『約束の地』として与え、アブラハムの子孫がエジプトに行き、そしてエジプトを出てきて約束の地目指して進んできて、目の前のヨルダン川を渡ればもう約束の地というところまで来たことが記されていました。ヨシュア記は、モーセの後継者ヨシュアに率いられたイスラエルが、カナンに進攻し占領していった様子が記録されているのです。

このことから、聖書のあらすじの流れとしてはモーセ五書+ヨシュア記で「六書」とする見方もできるのですが、キリスト教でもユダヤ教でも、モーセ五書はヨシュア記以降の巻とは区別されています。第5巻までがヤハウェとの契約の書で、ヨシュア記以降はその契約の成就の記録の書ととらえるのがよいと思います。

新約聖書では、最初の四巻の福音書でイエスの福音が伝えられ、続く第五巻の使徒言行録(使徒行伝)で、イエスの言葉に従った教会が建て上げられていった経過が記録されています。
同じように旧約聖書では、モーセ五書で神の言葉が伝えられ、続くヨシュア記で、神の言葉に従って国が建て上げられて行った経過が記録されているのです。

著者

伝統的に、ヨシュアが著者であるとして扱われています。ただし、ヨシュアの死後についても多少書いてあることからも、全編にわたってヨシュアが筆をとって一巻にまとめたわけではありません。
24章25に[ヨシュアは、これらの言葉を神の教えの書に記し、]とあるように、ある部分はヨシュア自身が書き記したものです。一方で本書には「今日までそこにある」という表現が目立ちます。たとえば5章9の[そのために、その場所の名はギルガルと呼ばれ、今日に至っている。]という記述は、ヨシュアの時代よりあとに書かれたことがうかがえます。逆に15章63の[エブス人はユダの人々と共にエルサレムに住んで、今日に至っている。]という記録は、ダビデがエブス人をエルサレムから追い出したサムエル記下巻5章6~7の記録よりも以前にこの部分が書かれたことを表しています。

おそらく、ヨシュアが書き記したものを含めたいくつもの史料を、後世に一書にまとめたのでしょう。伝聞情報なのですが、ユダヤ人の間では、後の時代の預言者エレミヤが記録を一巻にまとめたと伝承されているそうです。

本誌ではあまり著者にはこだわらないことにしますが、内容の多くがヨシュアに負っているという意味で、必要な場合には便宜上ヨシュアが著者として扱うことにさせていただきます。

内容

前述の通り、本書にはヨシュアの指導者就任から死までの時代を記録しています。

その中で、12章まででは、カナン征服の過程が記録されています。
申命記の最後の時点で、イスラエルはヨルダン川の東側に宿営していました。そこから偵察を送り、ヨルダン川を渡り、かつてはヤハウェに対する不信のゆえに大失敗したエリコ攻略戦を成功させ、パレスティナ南部から北部へと勝利を重ねたことが記録され、征服した王のリストで終ります。

13章からは、土地を部族ごとに分配した記録です。この時点ではヤハウェから占領せよと命じられた土地にはまだ未征服の民族が残っていましたが、ヤハウェは[わたしは、イスラエルの人々のために、彼らすべてを追い払う。あなたはただ、わたしの命じたとおり、それをイスラエルの嗣業【しぎょう】の土地として分けなさい。]とヨシュアに命じました。

続いて、ヨシュアの晩年の記録があります。ヨシュアの遺言ともいうべき告別のメッセージ、イスラエルとヤハウェの契約の更新、ヨシュアの死と埋葬です。

最後に短く、ヨセフの遺骨の埋葬の記録が添えられています。アブラハムのひ孫で、エジプトの宰相にまでのぼりつめたあのヨセフは、死のときに自分の遺骨を「約束の地」に持って帰ってくれるように頼んでいました。創世記50章25のこの記述が、400年ほどの時代を経てヨシュア記の最後でようやく完結するのです。

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作成:2005年2月18日

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