申命記 第14回

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28章69~30章は、モーセの第三の、そして最後の説教です。31章からモーセの遺言となっていることを考えると、自分亡きあとのイスラエルを心配するモーセの心情を思わずには読めません。

あらためて、祝福と呪い(28章69~29章27)

[これから述べるのは、主【ヤハウェ】が、ホレブ(シナイ山)で彼らと結ばれた契約とは別にモアブの地でモーセに命じられてイスラエルの人々と結ばせた契約の言葉である。]で始まるモーセの第3説教は、4章~26章の条約本文に加えて語られた補足事項といえます。

祝福(29章1~14)

モーセは全イスラエルに対して、まずこれまでの歴史に照らしてヤハウェとの契約を守る意義を説いていきます。

あなたがたは、ヤハウェがエジプトに対してした奇跡と大きなしるしと不思議とを、その目で見てきた。荒れ野をさすらった40年間、着物も古びず、わらじもすり減らないのを体験した。パンもぶどう酒などもなかったが、ヤハウェ自身が与える食物(マナなど)で養われてきた。
これらのことはヤハウェがあなたたちの神であることを悟らせるためのものだったのだ。
ヘシュボンの王シホンと、バシャンの王オグが、イスラエルを迎え撃とうとして出てきたが、ヤハウェによって我々は勝利し、彼らの国を占領してすでにルベン族、ガド族、マナセの半部族の土地とした(*1)。

[あなたたちはそれゆえ、この契約の言葉を忠実に守りなさい。そうすれば、あなたたちのすることはすべて成功する。]とモーセは勧告します。
王が民に強要する法律でもなく、征服者によって押し付けられた憲法でもなく、あなたがた自身が体験し目の当たりにしてきた事実によって、あなたがた自身がヤハウェと結んだこの契約のうちにとどまれ、とモーセは言っているのです。

この契約を結ぶのはイスラエル自身です。内閣とか国会とか官僚とかが国民と無関係に条約を結ぶのではなく、国民自身がヤハウェと契約するのです。
各部族の長や長老、役人を含むすべての成人男子も。
その妻子、つまり普段は人口調査のときさえ数に入れられない女性や子供も。
アブラハムの子孫ではない寄留者や、イスラエルで奴隷となった異国人も。
今日ヤハウェの前に立っている世代だけでなく、その子孫までも。
すべてがヤハウェとの契約の当事者なのです。

呪い(29章15~27)

続いてモーセは、イスラエルが長年とどまっていたエジプトをはじめ、そこを脱出してからとおってきた国々のことを、民に思い出させます。民自身が見てきたそれら諸国はすべて[木や石、銀や金で造られた憎むべき偶像]を神としていたことを。そのゆえにヤハウェがイスラエルをもちいて滅ぼしてきたことを。(*2)

それにも関わらず[(イスラエルが)もし、この呪いの誓いの言葉を聞いても、祝福されていると思い込み、「わたしは自分のかたくなな思いに従って歩んでも、大丈夫だ」と言うならば、潤っている者も渇いている者と共に滅びる。]とモーセは警告します。
自分たちは神に特別に祝福された選民である、という思いにおぼれて、[心変わりして、我々の神、主【ヤハウェ】に背き、これらの国々の神々のもとに行って仕える]ようなことがあった場合、ヤハウェに敵対したゆえに滅ぼされた諸民族と同じ末路がイスラエルを待っているのです。

その末路とは。モーセはこう言っています。

主【ヤハウェ】はその者を決して赦そうとはされない。そのときこそ、主【ヤハウェ】の怒りとねたみが燃え上がり、この書に記されている呪いの誓いがすべてその者にのしかかり、主【ヤハウェ】はその名を天の下から消し去られる。主【ヤハウェ】は、この律法の書に記されている契約のすべての呪いの誓いに従ってその者をイスラエルの全部族の中からえり分けて、災いをくだされる。

後世の子孫や外国人はその惨状、つまりヤハウェがイスラエルにくだした災害や病苦と[全土は硫黄と塩で焼けただれ、種は蒔かれず、芽は出ず、草一本生えず、主【ヤハウェ】が激しく怒って覆されたソドム、ゴモラ]などと同じありさまとなったのを見て、[なぜ主【ヤハウェ】は、この国にこのようなことをなさったのか。どうしてこのように激しく怒りを燃やされたのか。]と問わずにいられないほどであろう、とモーセは予告します。

子孫や外国人にそう尋ねられた人は、こう答えることになるでしょう。

「彼らの先祖の神、主【ヤハウェ】がエジプトの国から彼らを導き出されたとき結ばれた契約を、彼らが捨て、他の神々のもとに行って仕え、彼らの知らなかった、分け与えられたこともない神々にひれ伏したからである。主【ヤハウェ】の怒りはそれゆえ、この国に向かって燃え、この書に記されている呪いがことごとく臨んだのである。主【ヤハウェ】は激しい怒りと大いなる憤りをもって彼らを大地から抜き取り、他国に投げ捨てられ今日のようにされた。」

しかし、イスラエルが実際にヤハウェに背を向けてそのような状態になったとしても、回復の道は残されている、とモーセは言います。それについては次回。


*1 ヘシュボンの王シホンとの戦いは2章26~37。バシャンの王オグとの戦いは3章1~11。オグは、巨人であったといわれるレファイム人の生き残りだった。これらヨルダン川の東で占領した土地は、民数記32章で、12部族のうちルベン族、ガド族、マナセの半部族に与えられた。

*2 この40年の間に、エジプト脱出当時で成人だったものはすべて死に絶えているので、エジプトの偶像礼拝を自分の目で見ているのは当時未成年だった者だけだが、脱出後に生まれた世代も、親たちからエジプトのことは聞かされていただろう。

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#139
作成:2004年7月15日

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