レビ記 第10回

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大贖罪日(16章)

話は少しさかのぼりますが、アロンの息子である二人の祭司がおきてを逸脱してヤハウェに近づいたために死んだあの事件の直後に、ヤハウェが命じたこととして記録されています。いわく、大祭司といえども[決められた時以外に、垂れ幕の奥の至聖所に入り、契約の箱の上にある贖いの座に近づいて、死を招かないように。]

ハリソン・フォード主演の映画「失われたアーク」では、この契約の箱をドイツ軍が開けたとたんに災厄が周囲を襲いましたが、あれが本物の契約の箱だったらそもそも手を触れただけで大変なことになっていたのです。
第二サムエル記6章に、契約の箱の運搬中に箱を支えようとしてふれた者がその場でヤハウェに殺されたという事件が記録されています。いずれ本誌でも解説しますが(今のペースではいつになるかわかりませんけど)、筆者の感覚では納得しがたい事件です。しかしたびたび繰り返していますが、「これくらいならいいだろう」は通用しません。創造者の恵みの基準が、人が納得するかどうかに関係ないように(たとえばあなたが生まれたこと、そして今も生きているということが、どれだけ奇跡的なことか!)、創造者のさばきの基準も人の納得を求めるものではないようです。

続いて、年に一度の贖罪の儀式について規定されています。
大祭司はいつもの豪華な祭服から亜麻布の質素な祭服に着替えて、二匹のヤギのために"くじ"を引きます。この結果によって、一匹はヤハウェのものとされ、贖罪のささげものとなります。そしてもう一匹はアザゼルのものとされ、あがないの儀式ののちに[荒れ野のアザゼルのもとへ追いやる]とされました。

アザゼルというのが何なのか、あるいは何者なのか、わかっていませんが、おそらく悪霊(悪魔サタンの配下)であろうと考えられています。
大祭司がイスラエルを代表してヤギの頭に手を置き、民のすべての罪をヤギに移します。そしてヤギはイスラエルのすべての罪を背負って、荒野の奥へ、アザゼルのもとへと追いやられるのです。
悪霊に罪をたたき返すというのは、イエスの「ローマ皇帝のものはローマ皇帝に、ヤハウェのものはヤハウェに返せ」という教えにならって言えば、サタンのものをサタンに返す行為といえるでしょう。

こののち大祭司は、身を清め祭服を着替えてから、自分自身のためと民全体のための焼きつくす奉納をそれぞれ行います。アザゼルのヤギを荒野へ引いていった者も、宿営に入る前に身も衣服も洗わなければなりませんでした。

この祭儀は、現代では大贖罪日(ヨム・キプール)として、ユダヤ暦ティシュリ月10日(太陽暦では2002年は9月16日)に執り行われます。(*1)

聖潔法典(17章)

レビ記の16章までと17章以降では成立年代がまったく違うという説があります。内容的にも、イスラエル王国が崩壊して民が諸大国に離散して住むようになった時代、アイデンティティを守るためにもヤハウェとの契約を重視する必要があったころのものではないかという考えです。
が。16章から続けて読んでも別段の違和感も感じられませんし、本誌ではレビ記という1巻のものとして読んでいきます。

17章では、いけにえとして動物を殺すのはすべてヤハウェにささげるためでなければならないと規定しています。7節に[あの山羊の魔神(これがアザゼルか?)に二度と献げ物をささげてはならない。]とありますが、察するにイスラエルは、父祖アブラハムらにならって野外に祭壇を造りいけにえをささげているうちに、地元の他宗教の影響を受けていたのでしょう。

これを禁じて、幕屋の前以外の場所でいけにえをささげるのは、信仰上の行為ではなく単な殺害であり、ヤハウェの創造した生命をまったく無駄にうばった罪によって死刑と規定されたのです。

パレスティナ定住後に神殿が建てられ、幕屋の性格が神殿に移管されてからは、神殿が唯一の、いけにえをヤハウェにささげる場となりました。現在、神殿跡地であるあの「嘆きの壁」でユダヤ教徒が嘆いているのは、そ の唯一の場である神殿が破壊され、ヤハウェにいけにえをささげる場が失われたことを悲しむものでもあるのです。
というのは、いけにえは贖罪(罪の清算)の儀式ですから、いけにえをささげられないということは罪がそのまま人に残ることだからです。
現在の情勢では想像するのも難しいですが、もしもイスラエルとアラブの間に恒久和平が成り、ユダヤ教とイスラム教に和解が成った上で、エルサレムにヤハウェの神殿が再建されたとしたら、いけにえの規定も含めて旧約聖書の祭儀が復活することでしょう。

ちなみにキリスト教では、完全無欠にして究極のいけにえである神キリストを十字架という祭壇でヤハウェにささげて以来、動物のいけにえの必要はなくなっています。


*1 今日は何の日のページを参照。

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#100
作成:2002年1月16日
更新:2002年12月13日

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