出エジプト記 第7回

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ファラオvsヤハウェ(2)(8章12節~9章12節)

「わたしはファラオの心をかたくなにするので、わたしがエジプトの国でしるしや奇跡を繰り返したとしても、ファラオはあなたたちの言うことを聞かない。」というヤハウェの予告のとおり、ファラオは容易にはイスラエルの民を解放しません。

第三の災厄

約束を破ったファラオに対し、ヤハウェは予告なしで次の災厄を与えました。アロンが杖で地面を叩くと、まいあがったチリがぶよとなってエジプト全土を覆い、人と家畜を襲ったのです。

『ぶよ』は他の翻訳では、しらみ、蚊、蚤とも訳されていて、日本のぶよとは違うものかもしれません。とにかく、小さくてしかし刺されると無茶苦茶かゆくなる虫が大量発生したのでしょう。

今回もファラオは魔術師たちに対抗させようとしました。が、彼らはもはや対抗できませんでした。
彼らが、何か超自然的な力を持っていたのか、それともトリックを使っていたのかはわかりません。どちらであったにせよ、彼らの技術の限界を超える事態に「これは神がしたことだ」と認めるほかありませんでした。

しかしそれでも、ファラオは頑迷なままでした。

第四の災厄

続いてヤハウェは、早朝、モーセを通してファラオに予告しました。

わたしの民を去らせ、わたしに仕えさせよ。さもなければ、わたしはファラオと家臣と民の家や畑地にあぶを送る。
ただし、わたしはわが民の住むゴシェン地方を区別し、そこにはあぶを入らせない。それが主であるわたしがここにいる証拠である。
わたしは、わが民イスラエルをあなたの民エジプトから区別して、身受けする。これは明日おきる

そしてヤハウェは自分の言ったとおりにしました。ファラオの王宮から民の家にいたるまで、あぶの大群が襲ったのです。はえ、いぬばえ、とも訳されていますが、さまざま病気をはこぶ虫です。
乾燥地帯の飢餓の報道で、栄養失調のこどもたちのうつろな目のまわりにハエがたかっているのを見ることがあります。水分を求めて群がっているわけですが、病害が感染し、失明することもめずらしくないそうです。聖書は、「国はあぶのゆえに荒れ果てた」とまで記録しています。

しかもイスラエル人居住区であるゴシェン地方だけが無事なのですから、ファラオもさすがに今回はおどろいたようです。
魔術師が対抗できた、血の災厄とカエルの災厄は、ファラオは「この程度のことで神がどうのとは片腹痛い」と思っていたでしょう。ぶよのときも「たまたまだろう」と思っていたかもしれません。
しかし、災厄がエジプト人とイスラエル人を明らかに区別して襲った今回、ファラオの自信はぐらつきました。モーセとアロンを呼び「あなたたちの神を礼拝したいのなら、エジプト国内でやってもよい」と初めて譲歩します。

しかしモーセたちの目的はイスラエルの民を脱出させることですから、国内でという条件に妥協することはできません。モーセは、「エジプト人の目の前で牛や羊をいけにえにしたら、彼らは我々を殺すでしょう。我々の神、主に犠牲をささげるには、エジプト人を離れて荒れ野に三日路ほど行かねばなりません」と主張します。
エジプト人は多くの動物を神々と結び付けています。ファラオとしても、イシス神の聖なる動物である雌牛を、国民の眼前で殺し、しかも奴隷どもの神にささげるなど、認めるわけにはいきません。ヤハウェの戦いは、ただイスラエルを救い出すだけでなく、エジプトの神々と偶像礼拝を追い詰めていくのです。

やむなくファラオは「荒れ野に出ていってもいいがあまり遠くへ行かないように。そして自分のためにも、この力ある神に祈願してくれ」と譲歩しました。
しかしヤハウェがあぶを一匹残らず飛び去らせると、ファラオはまたも前言をひるがえしたのでした。

第五の災厄

目に見える虫たちの災厄の次は、目に見えない恐怖がエジプトを襲いました。ヤハウェは予告した上で、「はなはだ恐ろしい疫病」を送ったのです。疫病はエジプト人の所有する家畜、つまりろば、らくだ、牛、羊といった財産を襲い、全滅させました。
しかもファラオが全国の様子を報告させると、イスラエルの家畜は1頭も死んでいなかったのです。

しかしファラオは今更あとに退けないのか、ますます頑迷になりイスラエルを去らせません。

ところで「エジプト人の家畜はすべて死んだ」と記録されていますが、ヤハウェの予告は「野にいる」家畜だったし、このあとも災厄によってエジプト人の家畜が被害を受けるので、「エジプト人の家畜のうち、放牧中だったものはすべて死んだ」ということのようです。
つまりエジプト人のうちに、モーセの予告を伝え聞いて「これまでの災害を考えてもヘブライ人の神は力ある神だ。王様ががんばるのはいいが、うちの財産に被害が出ないように、明日は家畜を小屋から出さないようにしよう」と考える者が出はじめていたのではないかと思われます。

第六の災厄

続いてヤハウェは予告なしに次の災厄を送ります。モーセとアロンへのヤハウェの命令は、両手いっぱい分のかまどのすすをファラオの前で撒き散らせというものでした。
イスラエル人が強制労働でレンガを焼かされたかまど。血と汗と涙とともに集めたわらを燃やしたすす。モーセがそれをファラオの前で天に向かってまきちらすと、老人二人の両手ほどの量だったすすがエジプト全土を覆う細かいチリとなって人や家畜に振りかかり、膿の出る腫れ物を生じさせたのです。

あまりのことにファラオは、エジプトの神々の力によって対抗しようとしたのか、一度は敗れた魔術師たちを呼び出そうとしたようです。しかしその魔術師たちも、腫れ物のためにモーセの前に立つことさえできないありさま。

ファラオはそれでも、かたくな(頑迷)なままでした。いえ、聖書は「主がファラオの心をかたくなにされた」と記録しています。ヤハウェは、エジプトに徹底的な打撃を与えるために、ファラオの頑迷さを支配しているのです。
万引きの常習犯は、最初は軽い気持ちで万引きしていたのが、万引き中毒とでもいうかのように自分で自分を止められなくなるといいます。ファラオもかたくなになって拒絶し続けてきた結果、自分の頑迷を自分では破れなくなってしまったようです。

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#059
作成:2000年1月19日
更新:2002年12月11日

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