創世記 第60回

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ヨセフの政治(47章13節~26節)

7年も続くと予告された飢饉が、まだ激しく猛威を振るっていました。ファラオから全権を委任された、ヨセフことエジプト名ツァフェナト・パネアは、先の豊年に蓄えた穀物を国民や買出しに来たカナン人に販売していました。
人々が銀を使い果たすと、ヨセフは家畜と物々交換で食料を与えましたが、飢饉はまだまだ終わらない。とうとう人々は土地と自分自身とを代金に食料を求めました。
こうしてヨセフは、国中の富も農地も国民もファラオの財産としたのです。ただし、祭司職にはファラオから給与があったので、土地を売らずにすんでいました。

私たちの基準では「農民から豊作の間に徴収した穀物を与えるのに、何も奴隷にまでしなくてもよいではないか。信仰者のわりにヨセフは無慈悲なやつだ」という感じですが、時代も社会構造も違います。収めさせ蓄えさせた穀物はすでにファラオのもの。そのファラオの財産をタダでバラまくことはヨセフの権限でもできなかったでしょう。
しかしこの時代にしては画期的な政策をヨセフは実施します。畑にまく種は民にタダで与え、収穫のときには20%を収め80%を自分たちの取り分とせよと命じたのです。この税率はその後長くエジプト農業の規定とされました。
古代社会の税率は40%から60%に達することもあったといいます。民が[あなたさまはわたしどもの命の恩人です。御主君の御好意によって、わたしどもはファラオの奴隷にさせていただきます。]と答えたという記録からも、異例の温情政策だったことがうかがえます。

ヤコブの遺言(47章27節~48章)

[イスラエルは、エジプトの国、ゴシェンの地域に住み、そこに土地を得て、子を産み、大いに数を増した。]と記録されています。
イスラエルがエジプトを出て行くのはこれから430年後ですが、70人で移住してきたのが出て行くときには壮年男子だけでも60万人にまで増えることになります。

ですがヤコブことイスラエル翁自身の、この世での生涯は終わりつつありました。
移住から17年。147歳のイスラエル翁は、死期を悟ってヨセフを呼び寄せ、自分の遺体はエジプトではなく先祖たちが眠る墓に埋葬すると誓ってくれといいました。

リーダー格のユダでも長男ルベンでもなくヨセフにこのことを託すのは、「エジプトを救った偉大なるツァフェナト・パネアの父」などという扱いでこの国に埋葬されてしまわないようにということもあったでしょう。ですがヤコブには「ヤハウェが約束した地に葬られるべきだ」という思いがあったのです。
一族がいずれエジプトを出てカナンに戻るのは、ヤハウェが約束した確実なこと。ヨセフも同じ信仰から父の求めに応じて誓い、その死後に誓いを果たします(→50章)。そしてヨセフが死ぬときも、ヤハウェが一族をエジプトから連れ帰るときに自分の骨を運んでくれるようにと、兄たちに頼むことになります。

この後しばらくして、ヨセフのもとに「父、危篤」の急報が入りました。
ヨセフが二人の息子とともに駆けつけると、イスラエル翁は最後の力を振り絞るように寝台の上で身を起こしました。そして、ベテルでのヤハウェの祝福の約束「あなたの子孫を増やす」「カナンをあなたの子孫の永久の所有地とする」を思いだし、ヨセフの子であるエフライムとマナセを自分の養子にしたいと提案します。
最愛の妻ラケルの面影を二人の孫に見て懐かしんだあと、イスラエル翁は二人に口づけして抱きしめ「ヨセフの顔さえ生きて見られるとは思わなかったのに、ヤハウェはヨセフの子供たちをも見させてくださった」と喜ぶと、二人の上に手を置いて、ヤハウェの名において祝福しました。

どうか、この子供たちの上に祝福をお与えください。
どうか、わたしの名とわたしの先祖アブラハム、イサクの名が彼らによって覚えられますように。
どうか、彼らがこの地上に数多く増え続けますように。

先祖としての業績が子々孫々まで称えられるようにということではありません。業績というなら、ただヤハウェに従ったということのほかにはむしろ失敗ばかりのイスラエル翁の人生でした。
そうではなく、この直前のヤハウェへの呼びかけとあわせて「ヤハウェが先祖にどうかかわり何をしてくださったかが、子々孫々までも伝えられて信仰が受け継がれるように」という願いなのです。

ところでこの祝福のとき、イスラエル翁は右手を次男エフライムの頭に置き、マナセには左手を置いていました。力や権威を象徴する右手の置き場を父が間違えたと思ったヨセフは、父の右手をとって長男マナセの頭に移そうとします。しかしイスラエル翁は、マナセも大きな民となるが、弟のほうはさらに大きくなると預言したのです。
この預言は現実のものとなります。のちにエフライムはイスラエル王国の北部を代表する名となり、王国が南北に分裂してからは北王国そのものを指す名となります。

こうして養子縁組は整いました。これによりエフライムとマナセは、ルベンやシメオンらと同列に取り扱われることになって、イスラエルの部族の名としては「ヨセフ族」というかわりに「エフライム族」「マナセ族」という名が出てくるようになります。

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2版:2003年05月20日

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