創世記 第58回

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エジプトへ (46章1節~27節)

約束の地をあとにして

旅立ったヤコブことイスラエル翁とその一族は、やがてベエル・シェバにさしかかりました。ここはヤハウェがイサクに契約を示し、またイサクがヤハウェを礼拝した地(26:23-25)、さかのぼればアブラハムがヤハウェを呼び求めた地(21:33)です。
一族にとっては信仰のふるさとともいえるこの場所で、イスラエル翁もまたヤハウェに礼拝をささげたと記録されています。ヤハウェが幻の中でイスラエル翁の前に現れ語ったのは、その夜のことでした。それはこんな言葉です。

わたしは神、あなたの父の神である。エジプトへ下ることを恐れてはならない。わたしはあなたをそこで大いなる国民にする。わたしがあなたと共にエジプトへ下り、わたしがあなたを必ず連れ戻す。ヨセフがあなたのまぶたを閉じてくれるであろう。

例によってヤハウェの自己紹介から始まった呼びかけは、「わたしは、人間が手で作った動くこともしゃべることもできない神ではなく、あなたの父祖が頼りにした神であり、あなたの父祖に契約を示し、守り、導いた神である」という宣言です。

その神が「恐れるな」と言います。イスラエル翁はなにを恐れていたのでしょう。
年老いてからの引越しには不安を感じることが多いと言います。しかしイスラエル翁の場合は、ヤハウェが「この地をあなたの子孫に与える」と言われた『約束の地』カナンから離れることこそ、恐れたのです。
でも今、その契約を結んだヤハウェ自身が、エジプトに下ることを恐れるなと言います。

さらにイスラエルを「エジプトで」大いなる国民にすると宣言しています。
アブラハム以来、ヤハウェから代々示された契約は「子孫を増やす」「国土を与える」「子孫を通して全人類がヤハウェの祝福に入る」の3箇条でした。そして今、ヤハウェは「子孫を増やす」の約束をエジプトで果たすといい、その後にこの『約束の地』へ、ヤハウェ自身が「連れ戻す」と言ったのです。

これにはイスラエル翁も驚いたでしょう。今は亡きアブラハムとイサクも、まさかエジプトでとは思わなかったでしょう。しかしイスラエル翁は「いよいよヤハウェが、契約を実行に移そうとしておられる」という確信とともに出発しました。もちろんファラオが用意したあの馬車に乗ってです。

ところで第三の「イスラエルを通して全人類が神の祝福に入る」は、この時から約1900年後、イスラエルの四男ユダの子孫として現れるイエス・キリストが救いを完成することで実現することになります。

イスラエルの子ら

このときイスラエルとともにエジプトに行った子らの人名が記録されています。といっても、この時点ですでに死亡しているはずの名やエジプトで生まれたヨセフの子らの名があるなど、移動した者の名簿として数えると「?」です。
これは、イスラエル翁の系図であると同時に、イスラエル民族の名簿でもあるのです。

おまけ

幻(まぼろし)

ベエル・シェバで「幻の中で神がイスラエルに」呼びかけたと記録されています(46:2)。というと「なんだ、幻覚か」と思われるかもしれませんが、聖書には二種類の「幻」があるのです。

ひとつは、ヤハウェが人間に啓示を与えるための手段としての幻です。このときのヤコブが見た幻もそうですが、聖書においてヤハウェはしばしば、夢や幻想的なイメージを媒介として人に啓示を与えています。これらの幻は、ヤハウェからの知識と才能によって意味を知る(解く)ことができます(参考:ダニエル書1:17)。

もうひとつは、神からのものではないそれこそ「幻覚」のたぐいで、ニセ預言者が口にするものです(参考:エレミヤ書14:14)。

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2版:2003年05月20日

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