創世記 第55回

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わな(43章15節~44章13節)

ヤコブの子らはふたたび、弟ヨセフとは気付かずにエジプトの宰相の前に進み出ました。ヨセフはベニヤミンが一緒にいるのを見て喜び、執事に、自分の官邸に連れて行くことと歓待の準備とを命じました。

突然エジプトの主君の邸宅に連れていかれて、驚いたのはルベンたち兄弟です。これは連行だ、あの戻されていた銀のせいでこれから拷問され奴隷にされてしまうんだ、と恐れました。このまま官邸に入ったら生きて出られないかもしれない。そう思った兄弟は、入る前に執事に、前回払ったはずの銀が戻されていたのですが何かの間違いでしょうからお返しします、と申し出ました。
すると執事は、それはあなたたちの神がしたことでしょうとだけ答え、人質として投獄されていたシメオンを出してきて、兄弟に引き渡したのです。(エジプト人であろう執事がこう言うのは、ヨセフを見て「ヘブライ人の神」のすごさを知っていたからでしょう)

兄弟たちには今回、「食料を買う」「シメオンを助け出す」「ベニヤミンを無事に連れかえる」という目的がありましたが、こうしてシメオンが解放されたのは、あのエジプトの主君が疑いを解いたということだ、と兄弟たちは思ったでしょう。
一同は屋敷に招き入れられ、エジプトの主君への贈り物を用意して、ヨセフが戻ってくるのを待ちました。そして彼が帰宅すると、贈り物を差し出しまたも弟の前にひれ伏したと記録されています。

一方、かわいい弟と再会できたヨセフにとって、あとの気がかりは父の消息でした。でもファラオに次ぐ権力者から「あなたがたの年をとった父上は元気か、まだ生きておられるか」と尋ねられては、兄弟たちは「元気で、まだ生きております」と答えたものの、今度はどんな難題を突きつけられるかと思ったことでしょうね。

愛する父の安否を知ったヨセフは、あらためてベニヤミンをじっと見つめました。そして「わたしの子よ。神の恵みがお前にあるように」と祝福すると、突然席をはずしてしまいました。「弟懐かしさに、胸が熱くなり、涙がこぼれそうになったからである。ヨセフは奥の部屋に入ると泣いた」と記録されています。

ところが、ヨセフはまだ正体を明かそうとしないのです。先ほどの祝福も「わたしの子よ」と権力者としてのごく自然な言葉、そしてもう一度兄たちにわなを仕掛けようとするのです。

やがて公邸で宴がはじまりましたが、エジプト人は異文化人を見下していた上に、羊飼いを忌み嫌っていたことから、ヘブライ人の羊飼いである兄弟たち、相伴するエジプト人、そして最高位にあるヨセフというふうに別々に席についたと記録されています。
この時に取り分けられた料理は、ベニヤミンの分がほかの人の分より5倍多かったと記録されています。それはともかく、来たときはびびっていた兄弟たちも、シメオンが解放されたことと、エジプトの主君が歓待してくれたことで、スパイ容疑は晴れたのだと安心したことでしょう。

しかしその酒宴の裏で、ヨセフは執事に、兄たちが買った穀物の荷の中にまた銀を戻しておき、さらに「わたしの銀杯をあの一番年下の者の袋に入れておくように」と命令していたのです。

もちろん執事は命じられたとおりにしました。そして翌朝、兄弟がロバと共に出発した後。ヨセフは執事に命令を与えて彼らを追わせたのです。

執事は追いつくと「なぜ私の主人の大事な銀杯を盗んだのか」と詰問しました。
一難去ってまた一難。兄弟は驚いて容疑を否定し、「もし荷物からその銀杯が見つかれば、その者は死罪に、他の兄弟もみな奴隷に」と答えました。しかし執事が長男から順に荷を検(あらた)めていくと、なんと、絶対に父ヤコブのもとに連れ帰らなくてはならないベニヤミンの荷から銀杯が!

このとき彼らは衣を引き裂いたと記録されています。これはヘブライ人にとって最大級の悲しみの表現です。うなだれてヨセフのもとに連行される彼らの運命やいかに。

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2版:2003年05月19日

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