創世記 第53回

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再会(42章1節~28節)

ヤハウェがファラオ予告した通り、7年の大豊作の後に激烈な飢饉がやってきました。しかしエジプトには、大豊作の際の貯蔵が豊富にあります。
ファラオにしてみれば、この大飢饉が7年も続くのかと思うと「もしヨセフにまかせていなかったら」とぞっとしたことでしょう。ヨセフにまかせて正解だった、神々がエジプトを救うために彼を遣わしたのだ、くらい思ったかもしれませんね。
民がヨセフのもとにおしかけると、ヨセフは穀倉を開いて民に穀物を売りました。

さて、[その飢饉はすべての国々を襲った]と記録されています。
ナイル川の恩恵があるエジプトでさえ飢饉のときに、周囲の乾燥した地域が無事ですむわけもありません。それで[世界各地の人々も、穀物を買いにエジプトのヨセフのもとにやって来るようになった。と記録されています。

カナン地方も例外ではありません。ヨセフの父ヤコブは、エジプトに穀物があると聞いて息子たちを買い出しに行かせることにしました。父や祖父は飢饉になると移住しようとしましたが、そうしなかったのはヤコブの高齢のためか、それとも父祖の失敗(12章,26章)を教訓としていたのでしょうか。

ただしヤコブは、息子たちのうち末子のベニヤミンだけは行かせませんでした。最愛の妻ラケルが、難産で命を落とすのと引き換えに残したのがベニヤミンです。ラケルから産まれたのはヨセフとベニヤミンだけでしたが、ヨセフが死んだ(とヤコブは信じている)今、ベニヤミンだけが老ヤコブの生き甲斐になっていたのでしょう。
あるいは状況証拠(上の子たちがヨセフを憎んでいた、ヨセフは上の子たちを捜しに行ったまま帰らなかった)から、上の子たちに不信感を持っていたと想像することもできます。ヨセフを失ったヤコブは、おそらくヨセフの時以上にベニヤミンを溺愛していたでしょうし。

こうして長男ルベンを初めとする兄弟10人がエジプトに向かったのです。自分たちが奴隷として売り飛ばしたヨセフがそこで生き延び、大出世しているとは思いもせずに。。。

彼らがエジプトについたとき、ヨセフはすぐに兄たちだと気づきました。しかし兄たちは、目の前にいるのがまさかヨセフとは思いもせず、この大国の宰相の前で地面にひれ伏しました。
この時ヨセフは、はるか昔に見た、「兄たちが弟である自分の前にひれ伏す」という夢(37章)を思い出したのです。

そしてヨセフは再会の喜びに涙を流しながら駆け寄り、兄たちをだきしめ、、、となれば「めでたしめでたし」なのですが、ヨセフはそうはしませんでした。兄たちが自分に気づいていないと悟ると、なんとも意地の悪いことをはじめるのです。

ヨセフは、わざわざ通訳を介して兄たちに話しかけ、いや、尋問をはじめたのです。兄たちが「食料を買いにきました」と言うと、ヨセフは「いや、お前たちは敵のスパイだ」と。

パスポートも大使館もない時代、異国で嫌疑をかけられたら自力で信用してもらうしかありません。[しもべどもは、本当に十二人兄弟で、カナン地方に住むある男の息子たちでございます。末の弟は、今、父のもとにおりますが、もう一人は失いました。」と必死で身分を証明しようとします。

これにヨセフは「ならば、その末の弟を連れてきたら信じてやる」と言って、彼らを牢獄に監禁しました。そして三日目になって、条件を出します。1人だけを残し、他の者は、飢えて待っている家族のために穀物を持って帰るがよい。そして末弟をここへ連れて来い。そうしてお前たちの言い分が確認できれば、殺しはしない。

父がベニヤミンを手放すなど想像もできませんが、相手は食料を握り、自分たちの生殺与奪さえ握ったエジプトのトップです。もう互いに「これは、昔のヨセフのことでヤハウェから罰を受けているのだ」と嘆くしかありませんでした。
あの時ヨセフを命だけは助けようとしたルベンは「だから忠告したのに。これは、もう生きてはいないだろうヨセフの血が報復しているのだ」と言いましたが、今さら昔のことを責め合ってもしかたありません。

ですがこの時、兄たちが知らないことがありました。目の前にいるエジプトの宰相に、自分たちのヘブライ語が通訳なしで筒抜けになっているということです。
ヨセフは兄たちの言葉を聞くと、感情を押さえられなくなり、物陰に行って泣いた、と記録されています。そして戻ってくると、次男のシメオンを人質に決めたのです。

9人の兄弟は、ロバに穀物をつんでカナンへと帰っていきました。おそらく悄然としていたことでしょう。シメオンの妻子や父ヤコブにどう説明したらいいのか。
そんな彼らをさらに混乱が襲います。途中の宿で、兄弟の1人がロバに餌をやろうとして、エジプトで買ってきた穀物の袋をあけてみると、エジプトで自分が支払ったはずの銀がそこにあるのを見つけたのです。
これはヨセフが部下に命じてやらせたことでしたが、兄たちは[驚き、互いに震えながら言った。「これは一体、どういうことだ。神が我々になさったことは。」]と混乱するしかありませんでした。

ヨセフは何を思い、兄たちをスパイに呼ばわりして投獄したり、シメオンを人質にとったりしたのでしょう。なぜ「ヨセフです」と名乗り出ないのでしょう。
自分を殺そうとし、奴隷として売り飛ばした兄たちへの復讐なのか。だとしたら、銀を戻したのは何のためなのか。

ヨセフの意図は一体。。。

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2版:2003年05月19日
更新:2013年10月28日

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