創世記 第44回
ヤコブの子らの暴挙(34章13節〜29節)
ハモルがシケムとともに縁談にきたとき、ヤコブは息子たちにまかせて脇役になっています。すでに一家の中でリーダーシップを失っていたのか、それともイサクがリベカと結婚する時にリベカの兄ラバンが主導権を持っていたように、妹の結婚については兄が前に出る文化だったのでしょうか。
とにかくヤコブは、この問題を息子たちにまかせてしまいます。しかし、ヤコブの息子たちは妹を汚された怒りに燃え、シケムとハモルをだまします。
縁談に来たハモルたちに、ヤコブの息子たちはこう答えました。
自分たちは創造者ヤハウェの民のあかしとして、割礼を受けている。ヤハウェの民でなく割礼を受けてもいない人々に嫁にやることはできないから、シケムの町の男すべてが割礼を受けヤハウェの民となるなら、わたしたちは結婚を承諾してあなたがたと一つの民になろう。
シケムとハモルはこの条件を受け入れることにします。もともと割礼そのものは奇異なことではなく、むしろ珍しくはない風習を神との契約のしるしとして意味付けしたものです。さらに、シケムは家中でもっとも尊敬されていた人物だったので(何しろ彼の名が町の名になっているくらいですから)、彼が町の門(議会としての性格を持つ)に行き、ヤコブの一族と一つの民になることの利を説くと、人々は納得しすべての男性が割礼を受けました。
説明するまでもないかもしれませんが、割礼というのは、男性器の包皮を切り取る行為で、筆者などは考えただけでもそれが縮み上がるような気がします。しかも、現代のように鋭利なメスも麻酔もない時代のこと。シケムの男たちはみな、数日は痛みに耐えなければなりませんでした。
そしてその三日目、町の男たちが割礼の傷の痛みに苦しんでいるのを見越して、ヤコブの息子のうちシメオンとレビ(ディナの同母兄弟)が剣を手に町に入り、シケムとハモルともども男たち全員を殺し、ディナを連れ出しました。すると他の兄弟たちも来て、町中を略奪し、家畜を奪い、女と子供はすべて捕虜にしたのです。
ベテルへ(34章30節〜35章5節)
いくら妹をけがされたからといって、これはあまりにやり過ぎでした。しかも、ヤハウェとの契約のしるしである割礼を、人をだまし討ちにするための手段にしたのは、宗教的にも問題が大ありです。
事態を知ったヤコブはシメオンとレビに、困ったことをしてくれた、これで我々はこの土地の憎まれ者になった、と文句を言いました。が二人は、ディナが娼婦扱いされてよかったのか、と言い返しました。
ヤコブには家長としての威厳がまるで見えません。しかも息子たちに対しては政治的にまずいことになったという言葉しかなく、創造者の前において罪である、という言葉がないのです。
一族のうちに「外国の神々」を信仰する者もいたことも記録されいます。ヤコブは家の中でかなり発言力が低下していて、何があっても強く言うことができなくなっていたように見えます。
しかし、窮するヤコブにヤハウェが解決を示しました。ベテルに移り、そこに住めと指示したのです。ベテルは、ヤコブがエサウから逃れるとき、天からの階段を天使が上り下りする幻をみた地、彼の信仰の原点です。
ヤコブはただちに、家族も奴隷もすべての人を集め、「お前たちが身に着けている外国の神々を取り去り、身を清めて衣服を着替えなさい。さあ、これからベテルに上ろう。わたしはその地に、苦難の時わたしに答え、旅の間わたしと共にいてくださった神のために祭壇を造る。」と号令しました。
みんなはこれに従い、外国の神々と、それにまつわる装飾品を差し出しました。ヤコブはこれを埋めると、ベテルに向かって出発。ヤコブはシケムの町に対する暴挙のために他の町から攻撃されることを懸念していましたが、「神が周囲の町々を恐れさせたので、ヤコブの息子たちを追跡する者はなかった。」と記録されています。
おまけ
今回登場した人物の、英語でのつづり
シメオン Simeon
レビ Levi
英語のホームページですが、ファーストネームの由来を検索できるサイトがあります。やっぱりあちらは、聖書由来の人名って多いですね。
http://www.behindthename.com/