創世記 第37回

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父祖の故郷の地(29章1~14節)

東へと旅を続けたヤコブは、とある井戸にたどり着きました。そこに来ていた羊飼いにどこの者かと尋ねると、自分が目指していたハランの人たちでした。
それならナホル家のラバンを知っているかと尋ねると、「知ってるなんてもんじゃねぇ。もうすぐ娘のラケルも羊の群れを連れてくる頃だ」との返事。はたしてすぐに、ラケルがラバンの羊たちをつれてやってきたのでした。
ラケルの群れが来ると、ヤコブは井戸のふたをどかして羊たちに水をやりました。しかし冷静でいられたのはここまでで、ラケルに口づけすると声を上げて泣き出したのでした。

ヤコブのこの旅は、第一には自分の命を狙う兄エサウから逃げることでしたが、嫁探しという目的もあったのです。
たぶんヤコブは、父と母のなれそめくらいは聞いていたでしょう(*1)。ヤコブは今、一族の女性と井戸でであったことに、ヤハウェの導きを感じたのでしょう。しかも前回読んだ、夢での導きもあります。
ヤコブは、「この人こそわが伴侶として、主なる神が出会わせた人」と思ったことでしょう。

声を上げて泣いていたヤコブは、しばらくしてようやく自分が、ラケルの父ラバンの甥であることを話しました。するとラケルは、叔母リベカのときと同じように、走って家に知らせに行ったのでした。

するとラバンも、あのときと同じように井戸まで迎えに行きました。少しだけ違うのは、けっこうな年齢(イサクと同世代のはず)にもかかわらず、今回は走って迎えに行ったということです。アブラハムのしもべが来たときは、自分の父の兄弟の使用人が来たというだけでしたが、今回は自分の肉親が(たぶんはじめて)たずねてきてくれたのです。
よほどうれしかったのでしょう、ヤコブを見つけるなり抱きしめて口づけし、家に迎えて「お前は、本当にわたしの骨肉の者だ。」と言います。これは親類という意味なのですが、当時の養子縁組の際に使われる表現でもありました。あとでラバンの息子たちも登場してきますが、もしかしたらこの時点では男児がなく「自分を頼って来てくれた身内ヤコブを養子として跡取りにできる」と喜んだのかもしれません。

ヤコブvsラバン(14節~30節)

こうしてヤコブがラバンのもとに身を寄せて一ヶ月が経ちました。客といっても、子どもでも労働に駆り出されていた時代ですし、他にすることもないですから、ヤコブもラバンの家のために働いていました。ラバンの家畜の世話をしていたようです。

しかしラバンにして見れば、ヤコブはただの労働者として来たのではなく身内。報酬をどうしたものか。とりあえずヤコブ本人に、何を望むか尋ねました。
するとヤコブは、ラバンの二人の娘のうち、この地にたどり着いたときに井戸で出会った、「顔も美しく、容姿も優れて」いる妹ラケルを妻にすることを望みます。
ヤコブは、そのためにラバンの下で7年はたらくと言いましたが、もしかしたらラバンは、ヤコブがラケルを求めることを予想していたのかもしれません。というのも、あの手この手でヤコブを拘束し続けようとするのです。おそらくこの一ヶ月のヤコブの労働の成果が、ラバンにヤコブを利用しようという気をおこさせたのでしょう。

ラケルを愛するヤコブにとって、7年はあっという間でした。そろそろ結婚させてくれというヤコブに応じてラバンは盛大な祝宴を開きます。この結婚式の間、たぶん花嫁はベールをかぶっていたでしょう。そして夜、ヤコブは花嫁と床を共に。
ところが朝の光がさしてみると、床をともにした花嫁はなんと、ラケルではなく姉のレアだったのです。

だまされたと知ったときにはすでに遅い。何しろ昨日の結婚式には、土地の人たちも皆来ていたのです。レアとヤコブが新郎新婦として一夜を共にしたことは、町中の人間が証人。

想像だにしなかった裏切り。先にはイサクをだまし、エサウから全てを奪ったヤコブが、今度はだまされてしまったのでした。飛んでいって抗議したヤコブですが、ラバンは平然と、姉より妹を先に嫁に出すことはできないと答え、妹も嫁にやるからもう7年働けと言い出す。

ラケルを愛するヤコブに断れるわけもありません。レアとの婚礼の祝いは一週間続きましたが、その間のヤコブの心中たるや、苦虫ものだったでしょう。
その祝いの期間がおわってようやくラバンはラケルもヤコブに妻として与え、そのためにヤコブはさらに7年をラバンのもとで働くことになったのでした。


*1 イサクの代わりに嫁を捜しに来たアブラハムのしもべは、井戸でリベカを見つけました。
創世記24章。→当サイト創世記第32回

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2版:2003年04月10日

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