創世記 第33回

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アブラハムの再婚(25章1節~6節)

サラを天国におくったアブラハムが、ケトラという女性を妻にしました。
側女とも書いてありますが、彼女が子供を産むとアブラハムは、[側女の子供たちには贈り物を与え、自分が生きている間に、東の方、ケデム地方へ移住させ、息子イサクから遠ざけた。]と記録されています。
跡目争いの防止もあるでしょうが、「このカナン地方はイサクの子孫のものだと、神ヤハウェが定めた。だからケトラの子らは、ここにいては繁栄できない」と配慮してやったのではないか、という気もします。
事実、ケトラの子たちはそれぞれ子孫に恵まれ、聖書や他の史料によると、主としてアラビア方面に分布したようです。

このケトラの子たちについては、特にミディアンについて特記しておきます。
イサクの孫ヨセフは、奴隷としてミディアン人の隊商に買われていくことになります。モーセは、ミディアンの祭司の婿になりました。
それ以外のミディアン人の記録は、ほとんどがイスラエルの敵として登場することになります。

アブラハムの死(25章7節~18節)

アブラハムは175歳で亡くなりました。その死はこう記録されています。
[アブラハムは長寿をまっとうして息を引き取り、満ち足りて死に、先祖の列に加えられた。](25:8)

ただ長生きしたのではありません。長寿をまっとうし、満ち足りて死んだ。「やりたいことは全部やった」というよりも「やるべきことは全部やった」という意味の記録に思えます。(*1)

「先祖の列に加えられた」というのを日本人の感覚で解釈すると、祖先崇拝になってしまいますが、これは死んだというだけの表現です。
ご先祖様を大切にする気持ちは共通ですが、死んだ人間をおがむ(=礼拝する)という考え方は聖書にはありません。

跡取り息子のイサクとその異母兄イシュマエルは、サラが葬られた墓地にアブラハムを埋葬しました。
そののち「神は息子のイサクを祝福された」と記録されています。ヤハウェとアブラハムの約束はイサクに相続されたのです。

アブラハムの子孫

イシュマエルが登場したついでに(?)、イシュマエルの系図が記録されています。これはヤハウェがイシュマエルについて、[必ず、わたしは彼を祝福し、大いに子供を増やし繁栄させる。彼は十二人の首長の父となろう。わたしは彼を大いなる国民とする](17:20)と約束したことの実現の記録です。

ヤハウェの契約はイサクの系統に相続されていきますが、イシュマエルもアブラハムの子であり、ヤハウェの民のしるしである割礼の儀式を受けています。さらにハガルのうめきをヤハウェが聞き届けたゆえに(16:11-12)、ヤハウェはイシュマエルを見捨てませんでした。

しかしイシュマエルが137歳で死んだあと、その子孫は「互いに敵対しつつ生活していた」と記録されています。異教徒と結婚したためにヤハウェ信仰から離れてしまった例に似て、イシュマエルは信仰においても本家から離れていってしまったのかもしれません。
イシュマエルの子孫のあるものはのちのち聖書に登場し、あるものは遺跡の碑文に名をとどめています。

エサウとヤコブ(25章19節~26節)

さてイサクに話しを戻します。ヤハウェの導きによって結婚した夫婦にはなかなか子供ができませんでした。あるいはリベカも、サラ同様に“不妊の女”と呼ばれていたかもしれませんね。そんな妻のためにイサクがヤハウェに祈り求めると、結婚20年目にやっと子どもができたのです。

しかもヤハウェは、「待たせたな」とばかりに双子を与えたのでした。長男はエサウ(「毛深い」「赤い」の意味)と名付けられ、次男はエサウのかかと(アケブ)をつかんでいたので語呂合わせ的にヤコブと名付けられました。

ヤコブ、長子の特権を奪う(25章27節~34節)

やがてエサウは狩人となりました。ヤコブは「天幕の周りで働くのを常とした」と記録されていますし、料理も得意だったようなので、家畜の世話をしながら家事手伝いといったところでしょうか。
しかし円満な家庭とはいきませんでした。父親が長男を愛し、母親が次男を愛するという“ねじれ”があったのです。

日本の現行法では、遺産について兄弟の取り分は均等とされていますが、それでも「家は長男が継ぐ」という意識は、いまだに強いものがあります。ましてイサクの時代には、すべては長男のものでした。イサクも、長男を跡取りとしてかわいがったのでしょう。

一方リベカは、「穏やかな人」と記録されている家事手伝いのヤコブのほうがかわいかった。
しかしこのままでは、財産はすべてエサウのもの。ヤハウェとアブラハムの契約もエサウが相続するのです。ヤコブはいずれ、ケトラの子らのように、家を出ていかなければなりません。

ヤコブは人柄は穏やかでしたが、しかし兄の家督権を狙っていました。
ある日のこと。狩りの鉄人エサウもこの日はスカだったらしく、疲れ切って帰ってくると、料理中だったヤコブの鍋の中身を求めました。この時ヤコブは、エサウの持つ長子の特権と引き替えにすることを要求したのです。

数日間にわたるような狩りだったとすれば、獲物を取れなかった狩人の空腹は相当なものだったでしょう。やっと家にたどりついたときのエサウは、ヤコブの鍋を見て「ああ、死なずにすんだ」という思いだったでしょう。
そんなエサウは、ヤコブにつけこまれて、長子の権利をパンとレンズ豆の煮物と交換してしまったのです。

どう考えても、ヤコブが悪者です。ところが聖書はヤコブについては何も言わず、[エサウは、長子の権利を軽んじた]とだけコメントしています。それほど「長氏の権利」とは重いものだったのです。

年表

聖書の各記事の年代については,さまざまな説が提示されていて、しかし史料不足から決定力を欠いています。このため、ここにあげるのは必ずしも確定的なものではありませんが、参考として。

紀元前2005エサウとヤコブの誕生(イサク60歳)
1990アブラハムの死(アブラハム175歳、イサク75歳)
1942イシュマエルの死(イシュマエル137歳、イサク123歳)

*1 参考→テモテへの手紙二4:6-8
[世を去る時が近づきました。わたしは、戦いを立派に戦い抜き、決められた道を走りとおし、信仰を守り抜きました。今や、義の栄冠を受けるばかりです。正しい審判者である主が、かの日にそれをわたしに授けてくださるのです。]

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2版:2003年04月10日

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