創世記 第32回

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イサクの嫁取り[後編](24章29節~67節)

水くみをする働き者、苦労して汲んだ水を旅人に与える慈愛、求められなくてもらくだにまで水を与える機転、すべてを走って行うきびきびした動き。
ヤハウェは、エリエゼルが祈ったことをすべて聞き入れ、しかもエリエゼルが求めなかったことまでも添えて与えたのです。リベカは際だって美しかった、と記録されています。

ヤハウェの導きを確信し喜んだ、アブラハムの番頭エリエゼル(仮名)。一方、驚いたのはリベカです。母の家に走っていき(女性は離れに住むのが一般的だったようです→31:33)事情を報せると、兄ラバンがエリエゼルを迎えに出ました。

縁談

こうしてリベカの実家に招かれたエリエゼルですが、用意された食事に手を着けるより先に用件を進めようとします。
融通が利かない?いえ、彼は自分の使命の重要性を理解していたためです。何しろイサクの嫁取りは、主人の家の存続にかかわるのみならず、ヤハウェの約束の相続にかかわっているのです。(さらに言えば、エリエゼルは気づいていないかもしれませんが、アブラハムの子孫によって全人類が創造者の祝福に入る、とも予告されているのですから、この縁談には全人類の未来もかかっているのです。)

その真剣さにラバンは、彼がかなり重要な使命をたずさえてこの町にきたことを悟りました。
そこでエリエゼルは話し始めたのです。自分が、ナホルの兄弟アブラハムのしもべであること。アブラハムが、創造者に祝福されて裕福になったこと。夫婦とも年老いてから息子を得、家督を継がせたこと。その息子のために、カナンの異教徒ではなく故郷の一族から嫁を迎えるために自分が誓いをたてて遣わされたこと。

そして、自分が祈った通り(いえ、それ以上)の娘が目の前に現れた、それがお宅様のリベカお嬢様だったこと。彼女がアブラハムの一族の人間であると知って、神の導きを確信して感謝したこと。

そして、慈しみとまことを示してくださるつもりなら、そうおっしゃってください、と結んだのです。
これは聖書にときどき出てくる言い回しなのですが、意味を深読みしようとするなら、「慈しみ」とは、主人アブラハムの願いを聞いてくださるかということでしょう。「まこと」とは、アブラハムの信仰を心底から認めてくださるかということでしょう。

しかしこれが、縁談の使者の口上でしょうか。エリエゼルが言うべきことは「あなたがたの親族であるアブラハムの、跡取り息子の花嫁として、リベカさんをください」ということだけのはず。でも彼は、求める言葉も説得する言葉もなく、ただ事実と、その事実が創造者の導きによるのだということを述べ、「受け入れますか、どうですか」と聞いたのです。

なんとも型破りですが、リベカの兄ラバンと父ベトエルは[このことは主の御意志ですから、わたしどもが善し悪しを申すことはできません。主がお決めになったとおり、御主人の御子息の妻になさってください。]と承諾したのです。

こうして、「主の導きで」と言い、「主の意志ですから」とこたえて縁談が成立。この時も、まずエリエゼルがしたことは、ヤハウェを礼拝することでした。そしてそのあとでやっと、何というか普通の縁談っぽくなります。エリエゼルは主人から預かってきたたくさんの高価な贈り物(結納に当たる?)をリベカと兄と母に贈り、ようやく宴席が始まったのです。

新郎新婦ご対面

さて次の朝、エリエゼルは早くも帰ると言い出しました。
しかし新婦の親族にしてみれば、縁談が持ち込まれたのもまとまったのも突然で、名残を惜しみたいのが人情というもの。交通事情を考えれば、もしかしたらこれが今生の別れかもしれない。ということで、せめてあと十日は居てくれと頼みます。

人生経験豊富な老番頭が、その気持ちを察することができなかったとは思えません。でもこの嫁探しの旅をここまで進捗してこれたのはすべて創造者の導きのため。だから人間の都合で創造者の計画を遅らせるわけにはいきません。
何より当のリベカ本人が出発に同意したので、話しは決まりました。家族はリベカを祝福し、乳母や侍女たちと共に送り出したのでした。

さて、ちょっと想像してみて下さい。夕方、壮年の男が野を散歩しています。そこへ東の方から、ラクダに乗った一行が近づいてきました。夕方、イサクは西に、リベカは東にいたのです。
ベールをかぶっているとはいえ、際だって美しい花嫁が正面から夕日を浴びながらやってきたのです。エリエゼルから受け取った金銀の装身具が夕陽を反射して輝いていたことでしょう。
花嫁から見た花婿は、荒野の地平線に沈むでっかい夕陽をバックに、シルエットになって浮かんでいたでしょう。

この美しい光景が、イサクとリベカの出会いの場面です。恋愛結婚どころかお見合いさえしていない二人でしたが、エリエゼルから報告を受けたイサクは、彼女が、ヤハウェが自分のために備えた伴侶であることを受け入れたのでした。

年表

聖書の各記事の年代については,さまざまな説が提示されていて、しかし史料不足から決定力を欠いています。このため、ここにあげるのは必ずしも確定的なものではありませんが、参考として。

紀元前2025イサクとリベカの結婚(アブラハム140歳、イサク40歳)

おまけ

この物語では、リベカの父ベトエルよりも兄ラバンの方が前に出ているようにも感じられます。
ラバンはのちに、イサクの子ヤコブの嫁取りの時にも絡んでくるので、記録者はベトエルよりも主要な人物として書いているのだと思います。詳しくは29~31章で。

エリエゼルは任務の首尾を、自分を送り出したアブラハムにではなくイサクに報告しました。リベカにも、イサクを自分の主人として紹介しています。
アブラハムを守り祝福を与えてきた創造者が、このイサクの結婚を導いたことをみずから経験し、ヤハウェとアブラハムとの契約がイサクに確かに継承されていくことを知ったからでしょう。

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2版:2003年03月20日

布忠.com