創世記 第13回

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ノアの箱船(6章5節~9章19節)

乗船(7章1節~9節)

箱舟が完成すると、ヤハウェはノアに[家族とともに乗船せよ。清い動物と鳥7ペアずつ、清くない動物1ペアずつも一緒に載せよ。7日後から40日40夜のあいだ雨を降らせ、わたしが創造したすべての生き物を地上からぬぐいさるからだ]と命じました。
いよいよ、全地を裁く大洪水がはじまるのです。

ところでなぜヤハウェは「今から」ではなく「7日後から」としたのでしょうか。

想像ですが、おそらくヤハウェは、人間に最後の悔い改めの機会を与えたのではないかと思います。正しい人であるノアが、「自分と家族だけ助かれば」などと考えたとは思えません。おそらくこの七日間に、「箱舟に乗らなければ滅びる」と必死で人々に伝えたのではないか、と思うのです。

残念なことにその甲斐はなく、箱舟に乗ったのはノアの家族だけでしたが。
もちろん全知なるヤハウェは、ほかの人間が悔い改めないことを承知だったはずです。それでもチャンスを与えずにはいられないほど、ヤハウェは人間を愛していたのです。アダムとエバを追放する前や、カインを追放する前にもそうしたように。
聖書では7という数字は完全を意味します。ヤハウェは、悔い改めをうながすのに十分な期間として7日間の執行猶予を与えたのです。

洪水(10節~24節)

七日目。いよいよ雨が降り始めました。
それは[ノアの生涯の第六百年、第二の月の十七日]だったと記録されています。年月日を明記しているのは、これは歴史上のことである(神話ではない)という主張とも読めます
そして雨は40日間続き、陸地で建造された箱舟もついに浮き上がりました。

この洪水は雨だけではありませんでした。[大いなる深淵の源がことごとく裂け、天の窓が開かれた]と記録されています。上からの大雨とともに、地中からも大量に水が噴き出したのです。雨は40日間でやみましたが、[およそ天の下にある高い山はすべて覆われた]のは雨がやんだあとです。[水は百五十日の間、地上で勢いを失わなかった]と記録されているのも、「大いなる深淵の源」からの水が増え続けたのでしょう。

天地創造の二日目,三日目を思い出してください。水が大空の上と下にわけられ、さらに下の水が退いて陸ができました(1章6-10節)。
しかし今、上からの水と下からの水が、陸を飲み込もうとします。創造をやりなおそうというヤハウェの意図が表れています。

箱舟の外では「地上で動いていた肉なるものはすべて、鳥も家畜も獣も地に群がり這うものも人も、ことごとく息絶えた。」と記録されています。
世界中に洪水神話があるのは、先祖の記憶が語り継がれたのでしょう(ノアの家族以外は洪水の時に皆ほろびましたから、全民族全人類はノアの子孫なのです)。

ただ一つ創造の時と違うのは、箱船に乗った人や動物たちが、創世記1章28節のヤハウェの祝福「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ」を継承していくという点です。

解説

7は「完全」を象徴する数字だと書きましたが、このように意味を持つ数字がほかにも聖書にはいくつかあります。
たとえば40という数字は、「罪の清算」や「きよめ」に関係してでてくることが多いようです。

たとえば。エジプトを脱出したあとヤハウェに逆らったイスラエルは荒野を40年も放浪してからやっと「約束の地」に入ることが許されました(民数記32章13節)。鞭打ちの刑は40回まででした(申命記25章3節)。キリストは悪魔と戦う前に、40日間断食していました(マタイ4章2節)。

この洪水も、人の罪によってけがされた地を清めるために、神が40日40夜という期間を定めて雨を降らせたのでしょう。

おまけ

メソポタミアの地方に大規模な洪水があったらしいことは、地質学や考古学の調査によって、確認されているそうです。また、本当に全地球が冠水するほどの洪水があったのかという疑問から、ノアの洪水は全地球規模ではなく、聖書の舞台としての世界を襲ったのではないかという説もあります。(たとえば古代ローマ時代には、ローマ帝国の版図が「世界」であったように)

しかしこの洪水は、人という堕落した種を滅ぼすために[すべての生き物を地の面【おもて】からぬぐい去る]というヤハウェの意志によって起きたものです。つまり、聖書は「全地球規模」あるいは少なくとも、人が住んでいた全地域に及ぶ洪水だったと言っているのです。
メソポタミア地方の一部地域に見られる洪水の痕跡よりも、世界の各地の人類(ノアの子孫)が洪水伝説を記憶していることに、筆者は注目します。

「七日間の猶予」については、なぜ神は人を試すのかも参照ください。

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2版:2003年03月08日

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